シャープが「フロー型亜鉛空気電池」を開発、低コストな大型蓄電池を実現へ:蓄電・発電機器
シャープは2022年8月24日、大規模な電力貯蔵に向くという「フロー型亜鉛空気電池」を用いた蓄エネルギー技術の開発を開始したと発表した。
シャープは2022年8月24日、大規模な電力貯蔵に向くという「フロー型亜鉛空気電池」を用いた蓄エネルギー技術の開発を開始したと発表した。
開発するフロー型亜鉛空気蓄電池とは、空気中の酸素を活用して充電や放電を行う空気電池の一種であり、電気を蓄える物質(蓄エネルギー物質)に亜鉛(Zn)を利用する仕組み。一般的な蓄電池の基本構成である充放電を担うセルと、フロー型方式としてセルで充電された亜鉛の貯蔵を担う貯蔵部で構成する。
充電においては、酸化亜鉛(ZnO)が亜鉛に化学変化する際に、電子を蓄える。放電時には空気中に含まれる酸素との作用によって、亜鉛が酸化亜鉛に戻る際に蓄えていた電子を放出することで電気を取り出す仕組みだ。
現在はリチウムを利用する蓄電池が主流となりつつありますが、リチウムは産出国や精製国が限られることから高価であり、今後需給が逼迫(ひっぱく)するリスクが指摘されている。一方、亜鉛は安定的に調達が可能であり、リチウムより安価というメリットがある。さらに亜鉛を浸している電解液に水系の液体を使用しているため、発火の可能性が極めて低いという。
また、フロー型方式とすることで、セルと貯蔵部が各々独立していることから、貯蔵部の大型化によって容易に蓄電システムの大容量化が可能だという。原理上、貯蔵部はセルより低コストなため、安価な亜鉛の利用との相乗効果により、低コストかつ大容量の蓄電池を実現できるとしている。
今回のフロー型亜鉛空気蓄電池の開発は、環境省「令和4年度地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」の「ボトムアップ型分野別技術開発・実証」枠での採択を受けたもの。
昨今、再生可能エネルギーの導入拡大により、その出力変動の吸収による電力系統の安定化が課題となっており、その対策の一つとして大型蓄電システムの活用が注目されている。シャープではこうしたニーズに向けて、フロー型亜鉛蓄電池の早期実用化を目指すとしている。
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