ソーラーシェアリングの最新統計が公開、導入数やトラブル・作物の傾向が明らかに:ソーラーシェアリング入門(57)(3/3 ページ)
「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。今回は農林水産省が公開した、日本国内におけるソーラーシェアリングの導入状況をまとめた最新データの内容をお届けします。
営農型太陽光発電設備の下部農地での栽培作物
こちらも誰もが注目する営農型太陽光発電設備での栽培作物ですが、全体の構成比で見ると前年度と同様に引き続き野菜等がトップとなっており、観賞用作物、果樹という順番も変わっていません。
私が驚いたのは、集計対象となっている事例件数が前年度の2,591件から3,313件まで大きく増加したにもかかわらず、各作物の構成比に大きな変化が見られなかったことです。あらゆる作物が均等に増加しており、これは発電事業者やコンサル事業者などが過去に事例のある作物をそのまま拡大している可能性などが推測されますが、これは今後詳しく分析したいテーマです。
営農型太陽光発電設備の取扱いの見直し
こちらは、10年以内の一時転用許可が認められる条件を満たす案件の状況を集計したデータで、令和2年度はその比率が大きく増加しています。この制度見直しが行われてから計画された事業が多くなってきた時期になるため、今後もこの状況は続いていくと考えられます。
今後注目すべきデータとは?
今年も最新データが公表されたことを受けて、まずは速報的に個々のデータについてご紹介しました。一時転用許可件数全体は予想通りの傾向で、私が各所で述べてきた数値の範囲となり、また1件あたりの規模の縮小もFIT制度における事業用太陽光発電の入札範囲拡大や配電線レベルでの系統制約問題の持続などと照合すると妥当な流れです。
令和3年度以降は本文でも触れた特定営農型太陽光発電の影響が出てくると見られますので、一時転用許可件数や面積、また10年以内の一時転用許可要件に関するデータに変化が出てくるかどうかに注目です。
意外だったのは設備下における作物の比率で、営農型太陽光発電・ソーラーシェアリングについてさまざまな情報が飛び交うようになる中で、これまで実績を積み上げてきた先行事例を見習うことで作物が同一化しているのか、参入する発電事業者・営農者の目線などについて、引き続き分析をする必要があると思います。
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