定置用蓄電池の市場が急拡大、2022年は2兆円規模に――再エネ・脱炭素がけん引:蓄電・発電機器
富士経済が電力貯蔵システム(Energy Storage System、ESS)・定置用蓄電システム向け二次電池の世界市場に関する調査結果を発表。2022年の同市場は2021年比141.5%の2兆26億円、出荷容量ベースでは同128.0%の69.9GWhとなる見通しで、今後も市場拡大が継続すると予測している。
富士経済は2022年10月20日、電力貯蔵システム(Energy Storage System、ESS)・定置用蓄電システム向け二次電池の世界市場に関する調査結果を発表した。2022年の同市場は2021年比141.5%の2兆26億円、出荷容量ベースでは同128.0%の69.9GWhとなる見通し。世界的な脱炭素化の流れに伴う再生可能エネルギーの導入拡大などが後押しし、今後も市場拡大が継続すると予測している。
2022年は新型コロナウイルス感染症の流行や半導体などの関連部品の調達不安がありながらも、再生可能エネルギーの普及拡大や導入補助政策の整備、データセンターや5G通信への投資活発化、自然災害への備えや電気代上昇などを背景に蓄電システムの需要が拡大した。特に系統用・再エネ併設分野のESS・定置用蓄電池向け二次電池の市場は、2022年に1兆円を突破し、今後も市場をけん引する見通しだ。
今後もカーボンニュートラルの実現に向けて再生可能エネルギーの導入が増加し、これに伴う変動電源比率の高まりにより、出力変動への対応や需要変動に対する供給力の確保などを目的に、調整用電源として二次電池市場が大きく拡大すると予想。2035年に同市場は2021年比3.8倍の5兆4418億円に、出荷容量ベースでは同4.7倍の255.2GWhに拡大する見込みとしている。
蓄電システムは、系統側では需給調整市場や卸電力市場での活用を見越した調整用電源としての設置、太陽光発電および風力発電システムの出力平滑化のための設置が進んでいる。一方、需要家側では、太陽光発電システムなどの自家消費やピークカット用途、レジリエンス性の向上を目的に非常用電源としての設置が進んでいる。
住宅用や小容量の業務・産業用は、パッケージ製品で供給され、系統用や大型の業務・産業用は、システムインテグレーターが案件ごとに電池やパワーコンディショナーなどを調達することが多い。近年海外では、導入の容易さ、迅速さ、コスト削減などを目的に周辺部品の設置や据付工事を含む導入が増えており、MWクラスの場合でもパッケージ製品をラインアップする動きがみられるとしている。
また、電池メーカーやパワーコンディショナーメーカーが、部材供給にとどまらず、自らシステムインテグレーターとなり蓄電システムとして供給し、事業領域を拡大させる動きもみられ、蓄電システムの業界構造が多様化していることから、市場拡大とともに事業者間の競争も激化していくと予想している。
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