「ソーラーシェアリングはなぜ普及しないのか」という疑問を考える:ソーラーシェアリング入門(58)(2/2 ページ)
「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。今回は筆者がさまざまな場面でよく聞かれる「ソーラーシェアリングはなぜ普及しないのか」という質問について、改めてその理由を考えてみます。
ソーラーシェアリングの普及は何のために
上述したような話は私も講演や各種メディアなどで繰り返し書いてきていますが、これらのような課題意識が根強くある一方で、ソーラーシェアリングに対する前向きな動きも増えてきています。
例えば、今年からスタートした環境省の脱炭素先行地域が第二次公募までで46地域選定されています。そのうち2割程度の地域ではソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)が事業計画に含まれています。その意図や対象はさまざまですが、行政の計画においてこれだけ幅広く導入されるようになったと言うことは、それだけソーラーシェアリングに地域で取り組む意義が浸透してきたという証左ではないかと感じています。
そんな動きも出てきたなかで、なおソーラーシェアリングの普及に足りないのは何でしょうか。私が最近お話しするようになってきたのは、「ソーラーシェアリングの普及は手段であって目的ではない」ということです。ソーラーシェアリングが地域農業を活性化させる起爆剤になるのではないか、中山間地の抱える荒廃農地問題を解決するのではないか、さまざまな課題に対する一種の万能薬のように評価されることもあります。
しかし、ソーラーシェアリングというのは一つの技術であり、その使い方は私たち自身が決めなければなりません。その考え方の順番が逆になってしまっているが故に、高すぎる期待と現実のギャップが生まれてしまっているように思いますし、本格的な普及にもつながっていないのだと考えています。
私たちが日本の農業を再生可能エネルギーによって持続可能なものにして真の食料自給を達成する、豊かな農村で世代を重ねて命をつないでいく、そうした意志と決意を固めた上で、その実現を支えるための手段としてソーラーシェアリングを活用することができます。
しかし残念ながら、今の日本の社会には「何か画期的な技術が世の中の問題を一気に解決してくれる」という考えが蔓延してしまっているように思います。ソーラーシェアリングを導入しても、そこで何世代も農業を繋いでいく人がいなければ、そのエネルギーを使って暮らしていく人が居なければ、何の意味もありません。
20年や30年の自分が生きている範囲のことではなく、100年先200年先を見据えてより良い未来を作り上げていくという人々の強い意志と、そのためにあらゆる労苦を厭わないという決意があってこそ、どんな技術も世の中で活きるという基本に立ち返ることが出来たとき、ソーラーシェアリングは本当の普及に向かって行くのではないでしょうか。
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