営農型太陽光の“農地転用申請数の問題視”に感じる、制度議論と現場の乖離:ソーラーシェアリング入門(59)(2/2 ページ)
ソーラーシェアリングについて解説する本連載。今回は、最新の調達価格等算定委員会において問題視された「特定営農型太陽光発電」の一時転用許可申請について、事業者の視点から考えてみます。
3年の期限の意味と、事業者視点で見た現場の実態
調達価格等算定委員会では、3年以内の一時転用許可取得を条件付けている中で、間もなく3年目を迎えるにも関わらず、91%の事業者が許可を未取得であることが問題視されています。
しかし、そもそもFITの調達価格は下記の第82回調達価格等算定委員会における資料に見られるように、トップランナー水準の費用が概ね3年先における一般的なシステム費用になるという見通しを勘案して決定されているはずです。従って、発電事業者からすると事業計画認定取得後速やかに運転開始をするのではなく、一定の期間経過後を目処として事業化することに経済的な合理性があります。そうした実態が分からないというのは、調達価格等算定委員会の委員に事業者が含まれていないことによる現場意識との乖離と言えるでしょう。
営農型太陽光発電における一時転用許可申請は、事業化に向けた最後の総仕上げと言えるステップです。大まかに事業化の流れを整理すると、営農型太陽光発電事業を行う農地が決定し、測量や地盤調査を行って設備設計を進め、接続申し込みを行って事業規模が確定、そこから地元合意形成、隣地地権者等との調整、そして営農計画を詰めて資金調達、一時転用許可申請へと進んでいきます。
一時転用許可が得られれば許可期間のカウントが始まりますから、速やかに発電所の資材発注・施工に着手して、運転開始に向かうという流れです。こうした現場実態を踏まえると、現段階で調査票に回答した事業者の77%が準備中というのも、それほど不思議なこととは言えません。加えて言えば、制度として「3年以内の運転開始」とルールを定めたわけですから、その3年が経過していない段階で「なぜ事業化が進まないのか」を検証する意味も薄いと思いますし、運転開始期限を超過したのであればルールに則って粛々と認定を取り消せば良いだけの話です。
営農型太陽光発電を含め、FIT/FIPを将来に向けた再生可能エネルギーの普及拡大に貢献する制度として活用する意思があるのであれば、机上の議論だけではなくもっと現場を見た制度設計を進めて欲しいと思います。
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