東芝が高性能なCO2吸収液を開発、劣化速度が3分1に 年度内商用化へ:省エネ機器
東芝が新たCO2分離回収設備で利用する、新たなCO2吸収液を開発。劣化速度を大幅に抑制したほか、環境負荷の削減も両立したという。佐賀市で実証を進め、2023年度中の商用化を目指す方針だ。
東芝は2023年4月、CO2分離回収設備で利用する高性能なCO2吸収液の開発を佐賀市と共同で実施すると発表した。佐賀市の清掃工場に納入した東芝製CO2分離回収設備で新開発のCO2吸収液を導入し、実証を行う。耐久性を確認後、2023年度中に新CO2吸収液の商用化を目指すという。
温室効果ガスの排出量削減に向けて、産業設備へのCO2分離回収設備の導入が期待されている。CO2の分離回収の大きな役割を担うのがCO2吸収液だが、事業者の観点からは、さらなる性能向上によるコスト削減のニーズが高まっている。
東芝が開発した新しいCO2吸収溶液は、排ガスからCO2を分離する際、低温状態でCO2を吸収し、高温状態でCO2を放出するアミン系の化学水溶液を利用している。CO2回収量1単位当たりの必要エネルギーを現行吸収液と同等に保ちながら、吸収液の劣化度合いを抑えた。そのため、事業者のCO2分離回収設備の維持管理費を低減することができるとしている。また、大気中へのアミン成分排出量が少なく環境負荷も低いという。
同社では既に、福岡県大牟田市にあるパイロットプラントで新CO2吸収液を導入し、約800時間の運転検証を行っている。CO2吸収液の劣化速度については、従来の3分の1にまで、大気中へのアミン成分排出量については、従来の10%程度にまで低減することを確認しているという。今回、佐賀市の清掃工場に設置されているCO2分離回収設備へ新CO2吸収液を適用した数千時間におよぶ連続運転を行い、新たなCO2吸収液の商用化を目指す。
東芝では2013年10月に、佐賀市「清掃工場バイオマスエネルギー利活用促進事業」向けに、小型のCO2分離回収実験プラントを佐賀市清掃工場に納入。2016年には佐賀市清掃工場に、当時、清掃工場向けとしては世界初となるCO2分離回収商用設備を導入した。これらの取り組みにより、佐賀市清掃工場では、ゴミ燃焼の際に発生する排ガスの一部から、1日で最大10トンのCO2を分離回収できているという。
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