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海外が先行する「カーボンリサイクル」のルール作り、日本の現状とビジネスチャンスは?欧米先進事例から考える日本のカーボンリサイクルの展望(3)(3/4 ページ)

カーボンニュートラルの実現に寄与する次世代技術として注目されている「カーボンリサイクル」。本連載ではこのカーボンリサイクルについて、欧米の先進事例を紹介しながら、日本の現状と今後の課題について解説する。最終回の今回は、カーボンリサイクルの普及拡大に向けた主要国・地域の取り組みと、日本のカーボンリサイクルの未来を考察していく。

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カーボンリサイクル産業のエコシステム形成

 カーボンリサイクルはCO2を資源として再利用するものであり、カーボンニュートラル社会実現における重要な技術の一つである。一方、カーボンリサイクル産業単独で発展することは難しいため、CCUS産業全体のエコシステムの形成は必要不可欠である。CCUS産業のエコシステムを形成するためには、CO2の分離回収/輸送/貯蔵の低コスト化が重要課題と認識されている。

 また、多くのカーボンリサイクル関連技術の開発や商用化においては、大量のエネルギー使用が必要となるため、サプライチェーンのCO2排出量削減の観点から低コストかつCO2排出量の少ないエネルギー(再エネ、水素等)も必要である。

 欧米では、炭素税課税、産業税金優遇/補助金提供、排出量取引制度等政策/制度面の整備を背景に、カーボン削減のニーズ、ビジネスチャンスを拡大するという切口で、関連インフラ整備が進められている。また、CO2を大量排出する業界(エネルギー、製造業等)の排出量削減活動の促進、国の基金/機構や民間投資ファンドによる技術研究開発/実証に対する資金支援/提供、CCUS産業への転用が可能な既存設備をもつ企業の参入促進、カーボンリサイクル技術で製造した製品市場(国内・海外)の拡大等、カーボンリサイクル産業のエコシステムの形成を促進している。


図4 カーボンリサイクル産業エコシステムのイメージ図 出典:経済産業省資源エネルギー庁「CO2削減の夢の技術!進む「カーボンリサイクル」の開発・実装」をもとにクニエ作成

日本のカーボンリサイクル産業関連支援施策

 経済産業省は2020年12月に「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定している。その中で、「カーボンリサイクル・マテリアル産業」が、グリーン成長戦略の14重要分野の一つとして位置付けられており、カーボンリサイクルの技術研究開発/実証に補助金が提供される。また、経済産業省はカーボンリサイクル技術ロードマップを作成し、産学官や国際連携のさらなる強化を目指して関連支援施策の検討、促進活動を進めている。

 一方、日本では2012年導入した「地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例」(2018年時点の税率289円/tCO2)を炭素税として取り扱っているが、欧州の税率との差が約10倍ある(英国2018年時点の税率は2,870円/tCO2)。また、日本では排出量取引制度がまだ導入されていない。これらの現状は欧米と比較して、日本のCCUS支援政策が充実していないこと、市場ニーズの拡大を支える制度の整備が不足していること、政府や民間投資機構の関連投資規模が小さいことが見て取れる。このことから、政策面においては上記図4のエコシステムの形成を促すのが難しいと推察している。

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