水素エンジンで走る鉄道車両を実現へ、JR東海が実証:省エネ機器
JR東海がカーボンニュートラルに向けた取り組みの一環として、水素を燃料として駆動する鉄道車両の模擬走行試験を実施する。【訂正あり】
JR東海は2023年11月16日、カーボンニュートラルに向けた取り組みの一環として、水素を燃料として駆動する鉄道車両の模擬走行試験を実施すると発表した。
同社では現在、軽油を燃料とするディーゼルエンジン車両のカーボンニュートラル化に向けて、バイオディーゼル燃料の導入などを検討してきた。今回こうした取り組みの延長として、水素動力車両の開発を目指すという。
水素動力車両は2つ種類の動力構成を検討している。一つは燃料電池と蓄電池を組み合わせたシステム、もう一つは水素エンジンと蓄電池で構成するシステムだ。これらのシステムを導入し、将来的に車両から排出されるCO2をゼロにすることを目指すという。
これらのシステムの模擬走行は、愛知県小牧市にある「小牧研究施設」で行う。勾配などの実際の走行条件を模擬できる装置を利用し、レールを模した軌条輪の上で台車を走行させる。燃料電池または水素エンジンを動力源として発電した電気と蓄電池の電気を、車両制御装置を介して車両走行試験装置の台車に装備された電動機に供給し、この電動機を回転させ台車が走行する仕組みだ。
実証では主に山間部が多い同社の非電化路線への導入を念頭に、勾配などのさまざまな走行条件を模擬して検証を行う。鉄道車両の走行性能や非電化路線への適応性などを確認する計画だ。燃料電池を活用した模擬走行試験は2023年11月から、水素エンジンについては2024年度以降に実施する予定としている。
なお、車両開発は日本車輌製造と共同で行う。車両制御装置は、水素動力ハイブリッドシステム用の制御装置を東芝インフラシステムズと開発を行い、燃料電池はトヨタ自動車製の燃料電池モジュールを採用する。鉄道車両用の水素エンジンはi Labo と開発する。将来の水素供給体制については、ENEOSと検討を開始する予定としている。
【訂正】記事初出時に社名に誤りがございました。お詫びして訂正いたします。(2023年11月29日午前10時48分/スマートジャパン編集部)
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