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営農型太陽光発電の関連制度が見直しへ、省令改正と新ガイドラインの内容とは?ソーラーシェアリング入門(64)(1/2 ページ)

2023年12月に農水省が営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)に関連する法制度の変更について、2つのパブリックコメントを実施。「規制強化」として取り上げられることも多い今回の改正内容について、その概要や主要なポイントを解説します。

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 2023年12月に、農林水産省から営農型太陽光発電に関する制度見直しについて、2つの意見公募手続き(パブリックコメント)が出されました。一つは省令(農地法施行規則)への営農型太陽光発電に関する条項の追加に関する改正案、もう一つは農地の一時転用許可において、新たなガイドラインを設けるという案です。営農型太陽光発電の制度化10年となるこのタイミングで行われた制度改正について、その背景と内容を見ていきます。

制度見直しの背景

 今回の営農型太陽光発電に関する制度見直しは、各種メディア等で「規制強化」として取り上げられている様子がうかがえます。一連の流れの端緒と言えるのが、2023年2月20日に開催された農林水産省の第3回農地法制の在り方に関する研究会で、営農型太陽光発電が農地法における課題の一つとして取り上げられたことでしょう。

 ここでは、茨城県つくば市、静岡県富士宮市、徳島県三好市から地域内における営農型太陽光発電の現状について報告が行われ、特に三好市では不適切な営農型太陽光発電の事例が増加し、特定の事業者による一時転用許可を不許可とする事例が積み上がっていることなどが報告されました。その後、3月になって自民党において営農型太陽光発電に関するプロジェクトチームが発足し、6月には不適切な営農型太陽光発電に対する制度見直しを含む提言が取りまとめられています。

 この提言の中で、適切な営農の確保と不適切事案への厳格な対応として、一時転用許可に関する許可基準等を法令に明記すること、制度の目的・趣旨の明確化と許可権者への周知のためにガイドライン等を作成することが示されていました。これらの議論や提言を受けて、今回の営農型太陽光発電に関する制度見直しが行われることになったと見られます。

省令改正の内容

 では、それぞれパブリックコメントにかけられた内容を見ていきましょう。今回の2つのパブリックコメントのうち、省令改正となる農地法施行規則改正案は「営農型太陽光発電を許可するための条件」が整理されたものです。大きくは、営農型太陽光発電の許可申請に際して提出しなければならない書類は何か、そして申請を「許可してはならない」場合の条件がそれぞれ挙げられています。

 提出すべき書類については、設備の設計図、農地における栽培計画、収支を含む営農に関する計画、設備下部の農地における営農への影響の見込み及びその根拠となる書類、設備撤去費用を発電事業者が負担することを証する書面、毎年の栽培実績や収支報告書を提出することを誓約する書面となっています。ここについては、新たに毎年の報告書の提出に関する誓約書が追記されているほか、営農計画を含めて収支に関する事項が追記されています。

 次に、「許可してはならない」とする条件ですが、これは従来の地域の平均的な単収からおおむね二割以上減少するおそれがある場合、農作物の品質を著しく劣化させるおそれがある場合、農作業を効率的に行うことができる空間を確保出来ていない場合などが挙げられているほか、新たに「農地法において違反転用等の処分を現に受けていないこと」が加えられています。

 従来からある許可条件に表記上の大きな変更はありませんでしたが、支柱の高さについて「地上から二メートル以上」と規定されており、従来は「おおむね二メートル以上」だったので、ここはより厳格化する変更が加えられています。なお附則として、これらの省令改正は令和6年4月1日に施行することとなっています。

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