いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向:太陽光(4/4 ページ)
次世代型太陽電池の代名詞ともいえる「ペロブスカイト太陽電池」。産業育成と導入拡大に向けた官民協議会も動き出し、早期社会実装への道筋が描かれようとしている。いまさら聞けないペロブスカイトの基礎知識と、最新の政策動向を整理した。
早期社会実装と海外展開に向けた政策動向
今後、諸外国とのさらなる競争激化が見込まれるなか、政府としては、世界に引けを取らない投資の規模とスピードを実現し、「量産技術の確立」「生産体制の整備」「需要の創出」に三位一体で取り組んでいく方針だ。
具体的には、グリーンイノベーション基金による研究開発や大規模実証、生産拠点整備のためのサプライチェーン構築支援などを強化するとともに、明確な導入目標を策定し、事業の予見可能性を高めていく。また、FIT・FIP制度に新区分を設けて民間投資を促進するほか、国・地方自治体の公共施設に率先導入し、国内市場の創出を図っていく。
海外市場を見据えては、「国際標準」の策定にも力を注ぐ。ペロブスカイト太陽電池は開発段階にあり、製品の性能や耐久性などを確認する試験条件やプロトコルが確立されていない。そのため、研究開発と並行して、評価方法の標準化や第三者による確認スキームの構築が求められている。
国際標準化の推進については、2023年4月に札幌で開かれた「G7気候・エネルギー・環境大臣会合」でも合意されており、日本は欧米など有志国との協調関係の構築に取り組んできた。2024年3月には国際標準化等検討委員会を設立し、産業技術総合研究所(AIST)など研究者を中心に、性能評価に関する標準規格の検討を開始している。今後、国際標準化に必要な測定データなどを集約し、IEC規格の標準原案づくりに向けた検討を進めていく。
国際標準化検討委員会の構成団体
- ペロブスカイト太陽電池技術開発実施企業:アイシン、エネコートテクノロジーズ、カネカ、積水化学工業、東芝
- 大学:京都大学、東京大学、立命館大学
- 研究・試験機関:神奈川県立産業技術総合研究所、電気安全環境研究所、産業技術総合研究所等
- 事務局:産業技術総合研究所、日本電機工業会
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
次世代の太陽電池として普及が期待されている「ペロブスカイト太陽電池」。その開発動向や市場創出に向けた日本政府の投資戦略などを紹介する。
注目のペロブスカイト太陽電池、世界市場は2040年に2.4兆円規模に拡大へ
富士経済の新型・次世代太陽電池市場の調査結果を発表。次世代太陽電池として注目が集まるペロブスカイト太陽電池の市場規模は、2040年までに2兆4000億円にまで拡大すると予測している。
住宅トップランナー基準を強化、太陽光発電の設置目標を設定へ
国は住宅分野の省エネ性能向上に向けて、大手住宅事業者などを対象にした「住宅トップランナー制度」の基準を強化する方針だ。その具体策として建売戸建及び注文戸建に係る住宅トップランナー基準として、太陽光発電の設置目標を設定する。
太陽光の長期安定電源化へ新施策、適格事業者&発電所格付け制度を創設へ
資源エネルギー庁では国内で導入が進む太陽光発電の長期安定電源化を目的に、適格事業者を認定する仕組みや、発電所の格付けを行う新制度を創設する方針だ。
