洋上風力発電向けのTLP型浮体、大林組が実海域で国内初の実証:自然エネルギー
大林組が青森県下北郡東通村岩屋の沖合3kmの海域で、国内で初めて洋上風力発電向けの緊張係留方式のTLP(テンション・レグ・プラットフォーム)型浮体を設置したと発表した。今後1年間、挙動観測を実施する。
大林組は2024年8月27日、青森県下北郡東通村岩屋の沖合3kmの海域に、国内で初めて洋上風力発電向けの緊張係留方式のTLP(テンション・レグ・プラットフォーム)型浮体を設置したと発表した。今後1年間、挙動観測を実施する。
洋上風力発電施設の基礎構造形式は、海底に基礎を構築して風車を支持する着床式と、海に浮かべた基礎に風車を設置する浮体式がある。現在、日本における洋上風力発電の基礎構造体はほとんどが着床式だが、着床式は比較的水深が浅い場合に適した形式のため、遠浅の海域が少ない日本では、水深が深い海域に適した浮体式の導入が期待されている。
浮体式は、係留方式として、スパー型やセミサブ型などのカテナリー方式が実用化されつつあるもが、浮体動揺が大きく、発電効率が低いことなどが課題となる。一方、TLP型は、浮体の動揺安定性や発電効率が高いことが期待されるとともに、海域の占有面積が小さく、漁業への影響が少ないことが特長。海底に設置されたアンカーをテンドンと呼ばれる緊張係留材で定着させ、浮体の浮力によって生じる緊張力を利用して基礎として機能させる仕組みだ。
しかし、TLP型は一般的に設置が難しいとされており、海底油田などでは実績はあるものの、洋上風力発電の基礎として国内での施工実績はなく、実用化はされていない。
大林組はTLP型浮体の開発に取り組んでおり、2018年に日本海事協会から基本設計承認を取得。開発したTLP型浮体は、浮体製作の低コスト化、大量生産を図るため、鉄筋コンクリートと鋼製部材によるハイブリッド構造を採用。テンドンには低クリープ高強度合成繊維ロープを採用した。
大林組独自の専用船などを用いない設置方法により、出力15MW級の風車を搭載する浮体の5分の1サイズのTLP型浮体を実海域に設置し、実波浪条件下での浮体の動揺安定性や係留材の緊張力の変化などを確認する。
今回の浮体には風車を搭載していないが、今後は風車を搭載した浮体による実海域実証実験を行うことで、商用化に向けた開発を推進する計画だ。
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