ソーラーシェアリングの最新統計が公開、データから分かる近年の傾向と課題とは?:ソーラーシェアリング入門(68)(2/3 ページ)
営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)について解説する本連載。今回は農林水産省が公開した、令和4年度末(2023年3月末)時点までの統計データを読み解きます。
設備の設置者と営農者の状況
こちらは今回も大きな変化が生じ、「発電事業者(県外)」が大きく増加しました。一方で農地所有者や農地所有者以外の農業者による設置事例は大きく減少しています。FITの調達価格が低下する中で、農業者自身が手掛けることが難しくなってきたことを示唆していると言えるでしょう。昨今は再生可能エネルギーを求める需要家のニーズに応える形での営農型太陽光発電事業開発が目立つようになっており、当面は地域外の発電事業者による設備設置が増加していくと推測されます。
下部農地の営農者の区分ーー「担い手」が引き続き増加
営農者の区分は、経年で認定農業者を中心とする「担い手」の比率が増加し続ける傾向にありました。今回もその状況を踏襲し、担い手が営農者となる事業が件数と比率の両面で増加しています。
令和4年度許可の事業に占める担い手の割合は57%となり、令和3年度の42%から大きく増加。ついに「担い手以外」の比率を上回りました。この点は、農地の区分でも触れたように、FITの特定営農型太陽光発電の要件を充足する10年以内の一時転用許可を得るため、またファイナンスの面からも、農業経営の継続が担保されやすいと考えられる担い手を営農者とすることが選好されていると考えられます。これについては、一時転用許可の延長といった制度上の措置が、上手く発電事業者を誘導しているとも評価できます。
営農に支障のある割合は過去最高に
今年の省令改正の要因ともなった、営農に支障のある事例の状況はどうなったでしょうか。残念ながら、営農に支障のある事例数並びに割合は過去最高を更新しました。集計対象となった事例4,189件のうち、「単収減少・生育不良(営農者に起因)」は635件(前年比137件増)で、全体に占める割合は15%と昨年度とほぼ同等となっています。
昨今、着実にこの件数が増え続けているのこともあり、有効な対策を講じるためには、比較的最近の許可事例で支障が生じているのか、一定以上年数を経過した事例で生じているのかなど、より精緻な分析が必要だと考えます。加えて、「単収減少・生育不良(災害等)」が減少する一方で、「設置工事等の遅延」や「その他」はいずれも前年比で件数が2倍近くに増加しており、これらの背景も探る必要があるでしょう。
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