トイレ排水と微生物燃料電池で発電、栗田工業が5日間の連続実証に成功:自然エネルギー
栗田工業が実規模サイズのセルを用いた微生物燃料電池の実証に成功。発電した電力で、電気機器の連続稼働を確認できたという。
栗田工業は2024年12月19日、排水処理装置に組み込むことを想定し開発を進めている微生物燃料電池について、実排水を対象とした実規模サイズセルによる発電実証試験を実施したと発表した。発電した電力で、電気機器の連続稼働を確認できたという。
微生物燃料電池は、排水中の有機物を分解した際に電子を放出する能力を持つ「発電菌」と呼ばれる微生物の働きにより、従来汚泥となっていた有機物を直接電気エネルギーに変換できる技術。排水処理に伴うエネルギー消費やCO2排出削減へ寄与する他、排水・廃棄物から電力を生み出して利用するエナジーハーベスティング(環境発電)の適用も期待されている。
水処理関連設備を手掛ける栗田工業は微生物燃料電池の開発に取り組んでおり、2022年に実施した合成排水を対象とした排水処理の実証試験では、同燃料電池セルの実規模サイズへのスケールアップに成功している。
今回取り組んだ実証試験は、微生物燃料電池のエナジーハーベスティング用途での実用化に向けたもの。2024年11月上旬の5日間、長崎県西海市のキャンプ場にて、ニシム電子工業と協力し、し尿を浄化して水洗用水として循環利用でき、被災地支援にも活用されている同社の自己処理型水洗トイレと開発中の微生物燃料電池セルを組み合わせた。トイレ排水の一部を微生物燃料電池の実規模サイズセルに供給することで発電を行い、それぞれ単三電池3本で動作するデジタル時計とLED電球計60個で構成するイルミネーションの稼働に利用するというシステム構成だ。
実証の結果、試験期間を通じて、排水中の有機物除去量あたり0.6〜0.8Wh/g-CODCrの電気エネルギーが得られ、これら電気機器の連続稼働に成功。発電セルの改良により、試験期間中のセル容積当たりの発電量は最大で550W/m3に達し、2022年時点の2倍以上に向上させることができたという。
今後、実証試験で確認された電気機器の連続稼働を踏まえ、災害時などの一般向け電源としての活用を模索するとともに、工場などの排水処理用途でも実排水を対象とした長期実証試験などを通じ、早期の実用化を目指すとしている。
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