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今後の政策議論のポイントは? 各種政府計画における営農型太陽光発電の取り扱いソーラーシェアリング入門(69)(2/2 ページ)

営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)について解説する本連載。今回は2024年度末に向けて大詰めを迎えている、各種政府計画の策定において、ソーラーシェアリングがどのように取り上げられているのかを整理します。

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地球温暖化対策計画及び「地域脱炭素2.0」と営農型太陽光発電

 新たな地球温暖化対策計画案は、昨年12月19日の中央環境審議会地球環境部会の合同会合(第7回)で提示され、新たに2035年度や2040年度における温室効果ガス削減目標値が示されました。

 この地球温暖化対策計画案の「第3章 目標達成のための対策・施策」のうち、「第4節 地方公共団体が講ずべき措置等に関する基本的事項」と「第7節 地方創生に資する地域脱炭素の加速(地域脱炭素ロードマップ)」において、営農型太陽光発電に関する言及があります。

 第4節では「営農型太陽光発電について、下部農地での営農が適切に継続されていない事例が発生する等の懸念が示されており、地域特性に応じた営農、地域共生・地域裨益の観点から、地方公共団体や公設試験研究機関等と連携して推進することが期待される」と記述。第7節では「加えて、地域脱炭素の推進に当たっては、例えばJ−クレジットや営農型太陽光発電の活用により、地域経済の担い手である中小企業、農林漁業者の経営改善等の地域裨益(ひえき)につなげる取り組みを進めるとともに、(略)食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現させる「みどりの食料システム戦略」(略)等の各分野における政策プログラムや関係省庁の進める地域づくり施策等と連携し、脱炭素とともに、循環経済の実現、持続可能な食料システムの構築、防災・減災や国土強靱化等の複数の課題の同時解決を図る」といった記述があります。

 また、「地域脱炭素政策の今後の在り方に関する検討会」取りまとめでは、営農型太陽光発電に関して具体的な施策への言及も。「下部農地での営農が適切に継続されていない事例が発生する等の懸念が示されている営農型太陽光発電について、地域特性に応じた営農、地域共生・地域裨益の観点から、地方公共団体、公設試験研究機関、地域の大学等と連携して行う実証事業等を推進する」のほか、「脱炭素型農業モデルの構築のため、都道府県・政令市等の大学、公設試験研究機関等と連携して行う営農型太陽光発電等の実証事業等を支援」や「地域において、次世代型太陽電池の農林漁業関連施設、営農型太陽光発電等への導入を含む取り組みを支援するモデルを構築することを検討する」といった記述がなされています。

食料・農業・農村基本計画の議論と営農型太陽光発電

 農林水産省の食料・農業・農村基本計画に関する議論が行われている食料・農業・農村政策審議会企画部会(第115回)において「基本計画の策定に向けた検討の視点(これまでの議論を踏まえた検討の視点の整理)」が取りまとめられており、こちらの中でも営農型太陽光発電については「農業生産活動における環境負荷の低減」において「⑤ 再生可能エネルギーの利用拡大」として「営農型太陽光発電については、望ましい取り組みを整理するとともに、市町村等の関与の下、エネルギーの地産地消など地域活性化に資する形で推進することが必要ではないか」という形で記述があります。

 一方、昨年12月19日に開催された地球環境小委員会合同会議(第37回)で公開された「農林水産省地球温暖化対策計画(骨子案)」では、「農山漁村における再生可能エネルギーの導入促進」とする項目はありながらも、小水力発電と木質バイオマス利用のみが記載されており、営農型太陽光発電については言及されていません。

まとめ

 ここまで見てきたように、エネルギー、地球温暖化対策、農業といった幅広い分野で営農型太陽光発電をどのように活用していくかといった点が議論され、計画案等に盛り込まれつつある様子が分かります。さかのぼると、2017年の未来投資戦略に営農型太陽光発電についての記述が盛り込まれてから8年近くが経ち、やっとその取り組みの必要性や重要性が広く認識される時代になったとも言えるでしょう。

 昨年の農地法施行規則における営農型太陽光発電の導入と、新ガイドラインの策定といった規制の見直しの背景にある、「営農状況が不適切な事例」への対応といった課題はいくつかの計画でも指摘されています。そうした事例を排除しつつ、適切かつ地域に貢献し得る営農型太陽光発電を後押ししていくために何をしていくべきか、そこが政策議論のポイントになっていくと考えられます。

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