国内のエネルギーアグリゲーション市場、2035年度に735億円規模に拡大
矢野経済研究所が国内のエネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス(ERAB)市場に関する調査結果を発表。市場は右肩上がりで推移し、2035年度には735億円まで拡大すると予測している。
矢野経済研究所は2025年1月22日、国内のエネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス(ERAB)市場に関する調査結果を発表した。2023年度の同市場は前年度比23.9%増の214億4000万円と推計し、2025年度は255億円、2030年度は430億円、2035年度には735億円まで拡大すると予測している。
ERABは発電事業者や電力の需要家が保有するエネルギーリソースを束ね、将来の電力の供給力や、電力に不足または余剰が生じた際の調整力を活用するビジネス全般のこと。アグリゲーターと呼ばれる多数の需要家を束ねるERAB事業者が介在することで、需要家エネルギーリソースや分散型エネルギーリソースを有効活用し、家庭も含めた多様な需要家が電力取引に参加できる環境が整いつつある。
アグリゲーターが集約した電力は、将来の供給力を取引する容量市場や需給調整市場などにおける供給力・調整力として取り引きされる。また、小売電気事業者が、電力の需要計画と実需要に差を意味する「インバランス」を回避したり、電力の需給逼迫時に高騰する卸電力市場からの調達を回避したりする目的で、自社と小売契約を結ぶ需要家に下げDR(デマンドレスポンス)要請し、協力した需要家にインセンティブを支払う経済DRも活用されている。
今回の市場調査では、アグリゲーターが容量市場や需給調整市場での取引により得る収入、および需要家型電力の需要を抑える下げDRで得るインセンティブなどを合算して金額規模を算出した。エネルギーを大量に消費する高圧・特別高圧の需要家において、脱炭素化の推進やエネルギー価格高騰対策として、経済DRが注目されていることなどを背景に、市場は右肩上がりで推移すると予測している。
2023年の改正省エネ法の施行に伴い、1年間で原油1500kl以上相当のエネルギーを使用する特定事業者等によるデマンドレスポンスの実施日数の報告制度がスタートしている。また、今後は電力系統や定置用途の蓄電池の導入量の増加が見込まれることから、蓄電池のエネルギーリソースを活用したDR参入の拡大が期待される。2026年度には需給調整市場への低圧需要家リソースの参入解禁が予定されているほか、家庭などの低圧需要家が活用する機器に、デマンドレスポンス向けの遠隔制御機能を事前に搭載する「DRready制度」の導入も提唱されており、市場の参入障壁も払拭が進む見込み。
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