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太陽光発電のセキュリティ対策 「モバイル閉域網の活用」が注目される理由とは:連載:海外製パワコンは本当に危険なのか?(3)(2/3 ページ)
太陽光発電のセキュリティ課題について、技術的・実務的な観点から検証していく本連載。第3回の今回は具体的なセキュリティ対策の手法について、実践的な観点から解説します。
より根本的な対策として注目の「モバイル閉域網」
こうしたファイアウォールの代替となる、新たなセキュリティ対策方法として注目されているのが、「モバイル閉域網」という方式の活用です。モバイル閉域網とは、携帯電話回線を使いながらも、インターネットを経由せずに企業の内部ネットワークに直接接続できるサービスです。日本では、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクなどの大手キャリアに加え、IIJ、日本通信、mineoなど多くの事業者が法人向けにこのサービスを提供しています。
モバイル閉域網の仕組み
通常のインターネット接続では、データは公衆網(インターネット)を通って送信されます。これに対して、モバイル閉域網では以下のような特徴を持ちます。
- 通信機器のSIMカードは、特別な閉域網専用SIMを使用
- データは携帯キャリア各社の閉じたネットワーク内だけを通り、インターネットを経由せずに管理サーバーに到達
- 外部(インターネット経由)からは、この通信経路にアクセスできない
例えるなら、通常のインターネットが「公道」だとすれば、閉域網は「専用道路」のようなものです。一般の車(外部からのアクセス)は入ることができません。
モバイル閉域網の決定的なメリット
太陽光発電設備のセキュリティ対策として、モバイル閉域網を活用する際のメリットとしては以下のポイントが挙げられます。
- 根本的なセキュリティ対策になる:インターネットからの攻撃を物理的に遮断できます。そもそも攻撃者がアクセスする経路が存在しないため、ファイアウォールのような「防御」ではなく、「隔離」によるセキュリティを実現できます。
- 運用の簡素化:ファイアウォールのような継続的な更新が不要です。一度設定すれば、長期間安定して使用できます。
- 確実な通信品質:専用の通信経路を使用するため、通信の安定性も向上します。
- 監査証跡の明確化:すべての通信が管理された経路を通るため、誰がいつアクセスしたのかを確実に記録できます。
実装における注意点
なお、モバイル閉域網の導入には、以下の点に注意が必要です。
- 初期設定時に専門業者のサポートが必要
- 閉域網用のSIMカードは通常のSIMより若干高価
- 対応している通信機器かどうかの確認が必要
しかし、長期的なセキュリティと運用コストを考慮すれば、十分に投資価値のある対策と言えるでしょう。実際、経済産業省などでも推奨されている方式であり、信頼性の高い対策として認知されています。
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