1Wh級の積層型リチウム空気電池の安定動作に成功、NIMSと東洋炭素：蓄電・発電機器

物質・材料研究機構（NIMS）は、東洋炭素との共同研究により、高出力・長寿命・大型化対応を同時に実現するカーボン電極を開発することで、1Wh級の積層型リチウム空気電池の安定作動に成功したと発表した。

[スマートジャパン]

　物質・材料研究機構（NIMS）は2025年9月、東洋炭素との共同研究により、高出力・長寿命・大型化対応を同時に実現するカーボン電極を開発することで、1Wh級の積層型リチウム空気電池の安定作動に成功したと発表した。

　リチウム空気電池は、理論上の重量エネルギー密度が現在主流のリチウムイオン電池の数倍に達する、“究極の二次電池”として注目されている。しかし、実用化に向けては、高出力性能の確保やサイクル寿命の向上など、複数の技術的課題を克服する必要が指摘されている。加えて、これまでに報告されているリチウム空気電池の電力量の多くは0.01Wh以下にとどまっており、実用的な電池としての研究開発を進めるためには、電池セルの大型化が求められている。

　今回、NIMSと東洋炭素による共同研究グループは、リチウム空気電池の性能向上に向けて、高出力、長寿命、大型化を同時に実現するカーボン電極の開発に成功。これは東洋炭素のメソスケール構造が制御された多孔質カーボン材料「クノーベル」に対し、NIMSがこれまでに確立してきた自立膜化技術を適用したもの。これにより、細孔構造が階層的に制御されたカーボン電極の作製が可能となり、リチウム空気電池の高出力運転を実現した。

左：メソスケール細孔が制御されたカーボン材料合成スキームの概念図／右：作製した1Wh級の積層型リチウム空気電池の外観　出典：NIMS

　さらに、カーボン電極の結晶性を高めることで耐久性が向上し、電池の長寿命化にも成功。同時に10cm角以上の大面積電極の作製にも対応可能な製造プロセスを確立し、大型セルへの応用も視野に入れた技術基盤を確立したという。また、これらの成果を統合し、4cm角サイズの電極を用いた1Wh級の積層型リチウム空気電池を試作し、安定した動作を確認したとしている。

　今回の成果について研究グループは、リチウム空気電池の実用化に向けた鍵となる「高出力・長寿命・大型化」という3つの課題を同時に克服する成果であり、同電池の実用化を大きく貢献するものとしている。