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コラム

e-文書法で進展する電子文書管理ITソリューションフロンティア:ソリューション

2005年4 月の施行を目指して、紙文書の電子保存を容認する「e-文書法(仮称)」が、2004年10月12日に国会に提出された。法案の成立により、文書保存コストは大幅な削減が見込まれる。しかし、一方で、改ざんの危険性が高まることも確かである。本稿では、e-文書法とそれを支える電子文書管理について紹介する。

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e-文書法によるさまざまなメリット

 e-文書法が施行されると、民間での紙による文書は、税務関係書類も含め、原則としてすべて電子保存が容認されることになる。

 「自己が一貫して電子計算機を使用して作成する帳簿書類」の電子保存は、すでに電子帳簿保存法により容認されていた。今回のe-文書法により、相手から紙で受領した書類の電子保存が新たに容認されるわけである。

 日本経団連の報告書(「税務書類の電子保存に関する報告書」2004年3月1日)では、経済界全体の紙による文書保存コストは、年間約3,000億円と試算されており、電子保存によって大幅なコスト削減が期待される。

 またそれ以外にも、検索性と参照性の向上、将来的な税務処理の発展、予備データの作成が容易になることによる大規模災害への備えなど、さまざまなメリットが考えられる。

電子保存要件と実現の方策

 電子保存要件の主たる目的は、真実性と可視性の確保ということになる。その詳細については、本稿執筆時点では開示されていない。

 内閣官房のe-文書法案の概要によれば、「保存を義務付ける個別の法令ごとにスキャン文書とする場合の改ざん防止や原本の正確な再現性の要請の程度が異なりうるので、電子的な保存の対象及び方法等については主務省令で具体的に定める」となっている。ただし、電子保存要件は、現時点で利用可能な技術レベルと利用コストを無視できないため、それはおおむね図1に示すようなものとなるであろう。

図
(クリックで拡大表示)

 ここでのポイントは、入力段階での改ざん防止と保管・参照時の非改ざん証明のために利用する電子署名とタイムスタンプであろう。

 紙文書を電子データ化する際、操作者の電子署名とタイムスタンプを付与する。電子署名によって電子データ化の操作者を特定するとともに、タイムスタンプにより、ある時刻にその文書が存在していたこと(存在証明)、それ以降、その文書が改ざんされていないこと(完全性証明)を証明するわけである。このほか、バージョン管理、検索性の確保、関連帳簿書類との関係性の確保などについても十分考慮される必要があるであろう。

 e-文書法対応のシステムを構築する際には、長期保管への考慮も重要なポイントとなる。文書によっては、その保管期間は、10年、20年、あるいは、それ以上となる。長期にわたり、大量の電子データを扱うことになるため、保管時のファイル形式や媒体、また、将来の移行についても、十分な計画が必要となる。

進展する企業の電子文書管理

 e-文書法の施行にともなって、企業の電子化投資は大きく拡大することが予想される。ただ、その投資規模は、ビジネスプロセス改善のレベルにより左右されるであろう。すなわち、紙文書を電子化してはじめて実現可能となるビジネスプロセスが、各業界・各業種で存在するはずである。また、電子保存を前提とした文書作成段階からのペーパーレスや電子交付についても、今後、数多くの提案がなされるはずである。

 一方で、注意しなければいけないのが、標準化(表1参照)とコンプライアンス強化の2つの大きな流れである。文書管理は企業活動の基盤として、今後、ますます重要視されるはずである。e-文書法は、企業の電子文書管理が大きく進展する契機となるであろう。

図
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