Oracle Database Cloud Serviceはどこまで「使える」か“ミッションクリティカルクラウド”は本当か?

“ミッションクリティカルクラウド”を標ぼうする「Oracle Cloud Platform」。その実力を測るための検証作業に、ミッションクリティカルシステムの構築/運用で豊富な実績を誇るPSソリューションズが名乗りを上げた。同社が「Oracle Database Cloud Service」などについて実施した検証の内容と、その評価を紹介しよう(本コンテンツは@ITからの転載です)。

2017年02月24日 10時00分 公開
[提供:日本オラクル株式会社]

ソフトバンクグループの中核SIerがOracle Cloud Platformを検証

 オラクルが2015年4月より国内でも提供を開始したパブリッククラウドサービス「Oracle Cloud Platform」は、「ミッションクリティカル用途にも耐えるPaaS(Platform as a Service)」を標ぼうし、リリース以来、サービスの機能の拡充が続けられている。

 オンプレミスの領域において、Oracle DatabaseはOracle WebLogic Serverなどとともに、ミッションクリティカルな企業システムを支える主要なミドルウエアとして広く利用されている。オラクルはOracle Cloud Platform上でも同等の環境を提供することを目指しており、その実現に必要な機能の実装を急ぐととともに、ミッションクリティカルシステムの構築/運用実績が豊富なパートナー企業による検証作業を支援している。

 その1社として取り組みを進めているのが、ソフトバンクグループでITソリューションを手掛けるPSソリューションズだ。2010年9月に設立された同社は、「情報革命で人々を幸せに」というソフトバンクグループの理念に基づき、ITソリューション事業、ITアウトソーシング事業、海外マーケティング事業など幅広く事業を手掛ける。このうちITソリューション分野では、ソフトバンクグループ各社が利用するミッションクリティカルシステムの構築/運用に数多く関わっている。オラクルの認定技術者制度である「ORACLE MASTER Platinum」の取得者も10人を抱え、「Oracle Exadata」や「Oracle Database Appliance」をはじめとするオラクル製品/技術の活用実績も豊富だ。

PSソリューションズ エンタープライズ事業本部 エンタープライズ事業推進部 部長/チーフテクニカルエンジニアの飯泉卓也氏

 PSソリューションズ エンタープライズ事業本部 エンタープライズ事業推進部 部長の飯泉卓也氏は、Oracle Cloud Platformの検証に取り組んだ背景と検証のポイントを次のように話す。

 「当社は、オラクル製品を用いたソリューションビジネス、とりわけミッションクリティカル分野に大きな強みを持ちます。Oracle Cloud Platformは、オラクルが自ら提供するPaaSであることから、ミッションクリティカル分野で求められる性能や可用性、セキュリティ、運用管理性の面で大きく期待できると考え、検証の実施を決めました。

 これまでオンプレミスのソリューションを手掛ける中で感じていた課題の1つは、サーバー環境の構築やソフトウエアのセットアップといった作業に手間と時間がかかり、利用開始までに長い期間がかかることでした。その期間を大幅に短縮できることがクラウドの利点であり、今回はそうした点も十分に検証したいと考えました」(飯泉氏)

 PSソリューションズが検証を実施したのは、オンプレミスで利用実績のあるOracle DatabaseのPaaSである「Oracle Database Cloud Service」と、Oracle WebLogic ServerのPaaSである「Oracle Java Cloud Service」である。これらのサービスについて、導入スピードも含めた使い勝手と、オンプレミスと比較した性能やスケーラビリティを確認しようというわけだ。今回、同社が検証に用いたシステム構成は次のようになる。

 図にある通り、Oracle Database Cloud Serviceについては主にオンプレミスのOracle Databaseとの性能を比較し、Oracle Java Cloud Serviceについてはスケーラビリティを検証した。以下、それぞれの検証内容を見ていこう。

性能はオンプレミスと遜色なし。ミッションクリティカルシステムへの適用も可能

 データベースの性能は、システム全体のパフォーマンスを大きく左右する重要な要素だ。パブリッククラウドで提供されるデータベースの性能がオンプレミスと比べて大きく劣るようであれば、いくらコストや調達スピードの面でクラウドが優れていたとしても、その用途は極めて限定的なものにとどまるだろう。

 そこで、PSソリューションズはOracle Database Cloud Serviceの処理性能とレスポンスタイムについて、オンプレミスのOracle Databaseとの比較検証を行った。この性能検証の狙いを、作業を担当したエンタープライズ事業推進部の杉山俊幸氏は次のように説明する。

PSソリューションズ エンタープライズ事業本部 エンタープライズ事業推進部の杉山俊幸氏

 「これまでオンプレミスでOracle Databaseを運用してきた企業がクラウドに対して感じる懸念点としては、可用性やセキュリティに加えて、オンプレミスと同等の性能が得られるかどうかということでしょう。これは当社においても同様であり、Oracle Database Cloud Serviceの処理性能やレスポンスタイムは特に気になるポイントです。そこで、実際にオンプレミスと遜色のない性能が得られるのかを検証したのです」(杉山氏)

 次に示すのは、オンプレミスのOracle DatabaseとOracle Database Cloud Service(図中ではDBCS)の比較検証に用いた環境の概略図だ。

 図にある通り、使用したOracle Databaseのバージョンはいずれも12.1.0.2、初期化パラメーターでCPU数とResource Managerを有効にすることでインスタンスケージングを行い、またメモリターゲットの値をそろえることで、基本的に同等のリソースを付与した。つまり、ほぼ同じ性能が出せる環境を整え、同規模のワークロードを処理する際の挙動を比較している。

 オンプレミスのOracle DatabaseとOracle Database Cloud Serviceの双方で同等のワークロード(OLTP系の処理)を30分間発生させ、それぞれの負荷量と処理時間の推移を示したものが次のグラフである。

 このグラフでは、主に負荷量の比較を目的に、データベースのCPU使用率と1秒間当たりのSQL実行回数の平均値を示している。ご覧の通り、CPU使用率とSQL実行回数のいずれにおいても、両環境の間に大きな違いは見られない。

 また、次のグラフはOracle DatabaseがCPUを使用している時間の割合を処理内容ごとに積み上げたものだ。

 一番下の赤い部分がデータベースセッションによるCPU使用時間、その上の4層の寒色部分がI/O関連の処理に費やされた時間である。見比べてみると、内訳に若干の違いはあるものの、全体の処理時間に大きな差のないことが分かる。

 「検証前は、オンプレミスとクラウドで、特にディスク性能の違いによるI/Oスループットや待機イベントの内容に差が出るのではないかと予想していましたが、実際には大きな違いは見られませんでした。Oracle Database Cloud Serviceでは、『どのような性能のディスクが幾つ使われているのか』といった部分がユーザー側からは見えないため、その点に不安を感じていたのですが、検証結果からは大きな違いや問題のないことが確認できました」(杉山氏)

 なお、Oracle Database Cloud Serviceの性能検証に際しては、PSソリューションズがオンプレミス向けに独自開発した運用管理用ツールをクラウド上で動作させ、各種の動作データを収集した。「Oracle Cloud Platformは、オンプレミスにおけるオラクル製品の運用で培ったノウハウや資産をそのまま流用できるという点でも、大きなメリットがあると感じました」と杉山氏は語る。

 また、迅速に導入でき、煩雑なセッティング作業なしで使えるクラウドならではの利点にも、あらためてアドバンテージを感じているようだ。

 「環境構築までの時間を大幅に短縮できることや、従量課金による導入コスト削減といったメリットに加えて、今回のOracle Database Cloud Serviceの検証では、オンプレミスと同様にサイジングさえしておけば、クラウドだからといって特別なことを行わなくてもオンプレミスと同じ性能が得られることが分かりました。今後は、可用性やセキュリティ面などのポイントにも注目しながら検証を進めていきたいと思います」(杉山氏)

Oracle Java Cloud Serviceでは負荷分散もスムーズに機能

 一方、先のシステム構成図に示した通り、Oracle Java Cloud Serviceについては、Oracle WebLogic Serverとロードバランサー(Oracle Traffic Director)を使い、無償のクラウド版チーム開発環境「Oracle Developer Cloud Service」上の負荷ツールによってワークロードを発生させることによって検証を行った(以下にOracle Java Cloud Serviceの検証に用いたシステム構成図を再掲)。具体的には、「ユーザー側でOracle WebLogic Serverのノード数を柔軟に増減(スケールアウト/スケールイン)できるか」、それに合わせて「ロードバランサーが正しく動作し、各ノードに均等に負荷が分散されているか」を検証している。

 全体の負荷量を変えずに、Oracle Java Cloud Service上でOracle WebLogic Serverのノード数を変化させた場合の1ノード当たりのCPU使用率を示したものが、次の2つのグラフである。

 1つ目のグラフはノード数を順に増やした場合(スケールアウト)、2つ目のグラフはノード数を減らした場合(スケールイン)の推移である。これらの結果から分かるように、スケールアウトの場合、ノード数が倍ならば1ノード当たりのCPU使用率は約2分の1、4倍ならば約4分の1といった具合に正常に負荷が分散されていることが分かる。スケールインについても同様だ。なお、検証に際しては連続的に負荷をかけ続けながら、Oracle Java Cloud Serviceの管理画面を使ってダイナミックにノードの増減を行っている。

PSソリューションズ エンタープライズ事業本部 エンタープライズ事業推進部の福田隆弘氏

 検証作業を担当したPSソリューションズ エンタープライズ事業推進部の福田隆弘氏は、「検証時には、併せてJavaのヒープ使用率なども確認しましたが、特に問題は生じていません。ノードの増加/減少の際にエラーが起きるといったこともありませんでした」と振り返る。

 また、杉山氏と同様、クラウドならではの手軽さには大きな魅力を感じたようだ。

 「スケールアウト/スケールインを行う際、Oracle Java Cloud Serviceでは管理画面上のボタンひとつで設定と実行が行えます。特にライセンス購入やソフトウエアのセットアップ、ネットワークの設定変更といった作業が自動的に済んでしまう点は、提供時間の短縮に大きく貢献すると感じました」(福田氏)

 福田氏の試算によれば、サーバー調達の期間まで含めて考えると、オンプレミスの場合に数週間から数カ月かかっていた導入期間を、わずか数十分程度にまで短縮できる見込みだという。

 「今回、Oracle Java Cloud Serviceのスケールアウト/スケールインの性能を検証し、ネットワーク周辺の自動的な設定変更が非常にスムーズに行われたことに強く感心しました。同じクラウドでも、一般的なIaaS(Infrastructure as a Service)を使った場合、ネットワークの設定変更やOracle WebLogic Serverのセットアップなどをユーザー側で考えて作業する必要があり、そこで多くの手間と時間がかかってしまいます。それらが自動的に行われ、なおかつライセンス購入などの事務手続きが不要である点は、Oracle Cloud Platformならではのメリットといえるのではないでしょうか」(福田氏)

ミッションクリティカルクラウドとしての活用を視野に検証作業を継続

 PSソリューションズによる今回の検証では、Oracle Database Cloud ServiceとOracle Java Cloud Serviceの基本機能や性能に関して、オンプレミスと遜色のないことが確認された。今後は、同社の強みであるミッションクリティカル分野に適用する際に求められる要件についても順次、検証を行っていく予定である。

 「Oracle Cloud Platformをミッションクリティカル分野に適用していくには、セキュリティや可用性、サービスレベルについても事前に十分な検証を行う必要があると考えています。特に可用性の観点ではOracle Real Application Clusters(RAC)が必須となるため、Oracle Cloud Platform上での挙動を確認しておきたいですね。これらの要素もオンプレミスと遜色のないレベルで利用可能なことを確認できたら、当社がこれまでに培ったノウハウを生かしつつ、お客さまのニーズに応じてオンプレミスとクラウドの双方でオラクルのソリューションをベースにしたシステムをご利用いただけるようサービスを展開していきたいと考えています」(飯泉氏)

 PSソリューションズは今後、従来の顧客であるソフトバンクグループのみならず、IoT(Internet of Things)やビッグデータ活用に関連して大規模システムの需要が高まることが見込まれるグループ外企業へのソリューション提供も視野に入れ、Oracle Cloud Platformの活用を検討していくという。

日本オラクル クラウド・テクノロジー事業統括 データベースソリューション本部 通信ソリューション部の黒田壮大氏

 なお、Oracle Database Cloud ServiceとOracle Java Cloud Serviceの双方について、本番環境での活用を視野に入れて詳細な性能検証を行った事例としては、今回の検証が国内初となる。検証作業を支援した日本オラクル クラウド・テクノロジー事業統括 データベースソリューション本部 通信ソリューション部の黒田壮大氏は、今後も引き続きPSソリューションズと協業し、検証作業を支援するとともに、エンタープライズへのOracle Cloud Platformの適用を促進させていきたいとしている。

 以上、ここではPSソリューションズによるOracle Database Cloud ServiceとOracle Java Cloud Serviceの検証結果を紹介した。この結果から、これまでオンプレミスで提供されてきたOracle DatabaseとOracle WebLogic Serverの利用価値が、Oracle Cloud Platformによってさらに高まることがお分かりいただけただろう。Oracle Database Cloud ServiceとOracle Java Cloud Serviceについては現在、30日間の無償トライアルを実施している。Oracle DatabaseやOracle WebLogic Serverをクラウドで利用したいと考える読者は、ぜひこの無償トライアルを活用して両サービスを実際に試し、ご自身の目でその実力を確かめていただきたい。


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