オンプレミスを「消費型モデル」で利用する、柔軟で俊敏な次世代IT基盤デジタルトランスフォーメーションを加速する

オンプレミスのIT環境を従来の所有型モデルから、使った分だけ支払う消費型モデルへと移行するメリットは計り知れないほど大きい。そのメリットと構築のポイントを解説する。

2019年03月20日 10時00分 公開
[ITmedia]

 クラウドファーストのトレンドが加速し、ITの世界でも従量課金の消費モデルが一般化してきている。一方、クラウドの活用状況も変化しつつあり、ワークロードに応じてパブリック、プライベート、オンプレミスのそれぞれの環境を適切に使い分ける取り組みも本格化している。例えば、営業や総務などの業務はパブリックで、研究開発など高度な機密情報を扱う業務やシステム監査のための立入検査を必要とする業務などはオンプレミスで、といった具合だ。

 しかし、オンプレミスをクラウドへ移行できたとしても、オンプレミスをクラウドのような消費型モデルへ変更するのは簡単ではない。ビジネスの成長に応じた柔軟かつ迅速なITキャパシティーの調達をオンプレミスの物理ITリソースを使って実現できなくてはならず、過剰投資を排除するために高度なキャパシティー管理も必要になるなど、さまざまな課題があるからだ。本稿ではその最適解を明らかにする。

ビジネス需要に沿った柔軟なIT調達を実現

日本ヒューレット・パッカード 酒井 睦氏 日本ヒューレット・パッカード 酒井 睦氏

 デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む企業は今、大きな変化が求められている。パブリッククラウドのビジネス利用が進み、消費型モデルの利用が一般化する一方で、企業内にはオンプレミスで運用する必要のあるワークロードも数多く存在している。こうしたオンプレミスに対してもビジネスの成長に応じて柔軟に利用できる消費型モデルや、俊敏性のあるIT基盤を構築できなければ、本当の意味でDXを達成することはできないはずだ。

 日本ヒューレット・パッカード(HPE)は2018年3月20日、「デジタルトランスフォーメーションを加速する次世代のIT基盤とは?」と題したセミナーを開催。同社が2018年2月に国内向けに発表した新世代のオンプレミス型従量課金サービス「HPE GreenLake」を国内ユーザーに披露した。

 HPEはこれまで「HPE フレキシブルキャパシティ」というオンプレミスの従量課金型IaaS(Infrastructure as a Service)を、米国では7年前から、日本でも4年前から提供しており、製造業をはじめ、金融業、通信業、商社、公共などの業界で多数の導入実績を持つ。今回は、同サービスをリブランディングして機能強化したIaaS「HPE GreenLakeフレックスキャパシティ」に加え、新たにバックアップやデータベースなどのソフトウェアをバンドルし、設計構築から保守運用監視までをパッケージ化した「HPE GreenLakeソリューション」を提供開始した。

 HPEのPointnext事業統括ソリューションビジネス開発本部で本部長を務める酒井 睦氏は、「サービスを消費する時代に突入し、ビジネスリーダーの多くがITを消費型で調達することを希望している。GreenLakeは、オンプレミスで消費型モデルを提供するだけでなく、ビジネスの成長に応じた柔軟で俊敏なIT基盤を提供する」と強調した。

HPE GreenLakeフレックスキャパシティ

 HPE GreenLakeフレックスキャパシティは、オンプレミスのITリソースを従量課金で提供するIaaSである。ユーザーが希望するハードウェアとソフトウェアをHPEが構成し、オンプレミスのサイトに設置する。ユーザーはシステムを所有することなく、ITリソースの利用量(サーバ台数やストレージ容量)に応じて月額料金を支払えばよい。

 ポイントは予備リソース(バッファー)にある。HPEがシステムを構築する際に物理リソースの約30〜40%をあらかじめ設置しておくことで、ビジネスが拡大してリソースの需要が増加しても柔軟に対応することが可能になる。ユーザーのリソース状態については、HPEの担当エンジニアが常時把握し、四半期に一度のタイミングでユーザーと協議をし、リソース不足が予想される場合は予備リソースを追加する。もちろん、実際に利用するまでユーザー側に追加費用が発生することはない。

 オンプレミスの従量課金化により、ユーザーはリソース不足を心配することなく容易にサービスを追加可能になり、ITコストを経費化できる。また「一度契約すると基本的に社内稟議(りんぎ)が不要になり、従来のようにITリソースの調達のために長い購買プロセスを費やす必要がなくなるメリットもある」(酒井氏)

 ビジネス需要に沿ったITリソースの調達を実現する上で重要になるのが、ユーザーとHPE側の双方でリソースの状態を正確に把握することだ。HPE GreenLakeのポータルサイトには、高機能のメータリングツールが用意されており、リソースの使用量や利用可能なキャパシティーをひと目で確認できる。

Flex Capacityポータルサイト Flex Capacityポータルサイト《クリックで拡大》

 なおHPE GreenLakeフレックスキャパシティの月額サービス料金には、ハードウェアとソフトウェアの使用料やインストレーション費用の他、保守サポート、専任エンジニアリングチームによる専用窓口、ポータルサイトの利用料なども含まれる。

オンプレミスのAs-a-Serviceを実現する HPE GreenLakeソリューション

 HPE GreenLakeソリューションは、オンプレミスのハードウェアに中核となるソフトウェアを搭載し、設計構築から保守運用監視までのサービスをパッケージ化して消費型モデルで提供するものだ。ラインアップには「HPE GreenLake Backup」「同 Big Data」「同 Edge Compute」「同 Database with EDB Postgres」「同 SAP HANA」という5つのソリューションがある。このうち、Edge ComputeとDatabase with EDB Postgresについては2018年後半の提供開始を予定している。

 HPE GreenLake Backupは、バックアップ製品をオンプレミスのバックアップ容量単位で課金するサービスだ。Commvault SystemsとVeeam Softwareのバックアップソフトを搭載したモデルを用意。CommvaultモデルはTB単位のバックアップ容量による月額料金、Veeamモデルは仮想マシン(VM)単位のバックアップにハードウェアとソフトウェアの利用料をプラスした月額料金で提供する。

 HPE GreenLake Big Dataは、ビッグデータの分析基盤をオンプレミスの従量課金で提供するサービスだ。ビッグデータ分析ソフトとして、HortonworksとClouderaのものを用意し、いずれも“Worker Node”単位の月額料金で課金する。

 HPE GreenLake for SAP HANAは、インメモリデータベース「SAP HANA」をオンプレミスの従量課金で提供するサービスだ。ハードウェアにはHPEのSAP HANAアプライアンスモデルを採用し、SAP HANAが使用するメモリ単位の月額料金で課金する。

 なお2018年後半に、HPE GreenLake Edge Computeはエッジデバイス単位の月額料金、HPE GreenLake Database with EDB Postgresはデータベースが使用するCPUコア数単位あるいはストレージ容量単位の月額料金で課金するモデルの提供を予定している。

「小さく始めて早めに利益を出す」HPE GreenLakeの先進導入事例

日本ヒューレット・パッカード 福田晶子氏 日本ヒューレット・パッカード 福田晶子氏

 続いてPointnext営業統括本部コンサンプションIT営業開発本部で担当部長を務める福田晶子氏が、HPE GreenLakeを採用して大きな成果を挙げた大手製造業のITグループ会社による先進事例を紹介した。

 この会社は「Microsoft SharePoint」導入プロジェクトに取り組んだ。同社のグループ会社はグローバルに展開しており、プロジェクトは地域単位でフェーズ1〜4の順番でユーザー数増加を進め、期間は2年、ユーザー1人当たりの利用容量は3GBに設定する。

 プロジェクト遂行には幾つかの条件があった。1つ目は2年間のスケジュール通りに完了させること。2つ目はオーバープロビジョニング(過剰な割り当て)を抑止すること。3つ目はキャッシュフローを改善することだ。さらにグループ会社のユーザーは既に「Office 365」を使用していたため、新たなサービスについても利用に応じて柔軟な支払いができるクラウド型での利用を希望していた。

HPE GreenLakeフレックスキャパシティでキャッシュフローも改善

 こうした条件を満たしながらプロジェクトを進めるに当たって新たに浮かび上がった課題は、クラウド型で提供することは良いとしても、R&Dに関連する機密データなども含まれており、コンプライアンスの観点からオンプレミスでの運用が必須であった点だ。もう1つの課題は、オンプレミスでクラウド型のITリソース提供を実現しようとしても、ユーザー数の増加を的確に予測することは難しく、最初から多めにITリソースを調達する必要があり、過剰調達を回避しにくいことだった。しかし、それでは初年度の収支が悪化して赤字が膨らむだけでなく、2年目以降も黒字化が難しくなる。ユーザーが予想以上に増えた場合もすぐに増設できず、予算取り、稟議、調達に時間がかかり、リソース要求に間に合わないという問題も浮上してきた。

 そこで白羽の矢が立ったのが、HPE GreenLakeフレックスキャパシティだった。HPEが予備リソースを提供する柔軟な従量課金サービスを使えば、IT投資のリスクヘッジが可能になるだけでなく、ビジネス機会を逃さずサービスレベルを維持することができ、調達プロセスも大幅に簡素化できる。キャッシュフローを改善できることも重要なメリットの1つだ。予備リソースのモデルを活用することにより、初期投資や追加投資を抑えることができれば、「小さく始めて早めに利益を出し、次のビジネスにお金を回すことができる」と福田氏はその有効性を語った。

 以上から、HPE GreenLakeフレックスキャパシティによって、オンプレミスのITリソースを従量課金で利用でき、企業のコンプライアンス条件を満たしつつ、ITリソースの効率化と可視化が実現できることが分かる。さらにHPE GreenLakeソリューションを活用すれば、バックアップやデータ分析といった中核ソフトウェアも併せてクラウドのような形態で利用できる。GreenLakeは企業がDXを進める上で有力な選択肢といえるだろう。


提供:日本ヒューレット・パッカード株式会社
アイティメディア営業企画/制作:TechTarget編集部/掲載内容有効期限:2019年6月30日