――自身が主人公になったアクションゲーム「高橋名人の冒険島」では、普通のゲーム大会とは違った子どもたちとの交流があったようですね。
「冒険島」は86年に発売したゲームで、私がマリオみたいなプレイヤーキャラクターになっているゲームなんですね。当時ファミコンブーム全盛で、小学校1年生とか幼稚園の年長組の子どもも、ゲーム大会にガンガン参加してきて、ファミコンユーザーの年齢がどんどん下にいっていた時代でした。今までのメイン層だった小学校高学年や中学生も遊んでいるんですけど、それでも大会で年齢制限を設けることはしませんでした。
そのため、中学生とか小学5、6年生と一緒に、小学校1年生とか幼稚園の年長さんが一緒に遊ぶんですよね。勝てるわけがないんですよ。最初の「1−1」のステージがクリアできないことも珍しくありませんでした。そうしたら、彼らは彼らなりに勝ち負け以外の面白いことを考えるんですね。
何をするかって言うと、「即死トラップ」であるたき火の前で待って、「ピコン」ってポーズするんですよ。ゲーム大会でポーズボタンの音がするって通常あり得ないことなので、「どうした」って行くじゃないですか。すると、私の顔を見てにこっと笑って、ポーズを解除してたき火に突っ込むわけです。私の目の前で私が全身火だるまになって死んでいくんですよね。
ここからはもう漫才ですけど、「あ、人殺し!」って私が言うと、子どもがぎゃははって笑うっていう。すると他の子どももまねし始めて、その繰り返しでした。幼稚園児の参加者が出てきたら全てそれでしたね。
――まさに、ゲームを通じた名人の一つのエピソードと言えそうです。名人にとってゲームとはどういう存在なのでしょうか。
ゲームというのはツールです。ゲーム自体としては、全ステージクリアするとかエンディングを見るといった目的があるんですけど、私は、ゲームは「会話のツール」だと思っています。おじいちゃんと孫がしゃべるような感じで、年齢関係なく話せるきっかけを与えてくれるのがツール、これがゲームだと思っています。あとはそのツールをどう使うかは人それぞれです。
ゲームはツールであるからこそ、つまらないゲームにも価値が生まれるんです。つまらないゲームという意味の「クソゲー」という言葉がありますけど、それでも遊んでみて、「やっぱりクソだったね」って言って、これでも話題になるんですよね。
ゲームとして面白いというのは作り手としては当たり前で、それはより多く売れるものになります。でも、どんなにつまらないゲームであっても、話題のネタになるっていう時点で、今でいう「バズっている」わけなんですよね。どんなゲームでも、ツールとして考えると、ゲームはもう最高のコミュニケーションツールですよ。
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