こうしたLINEと総務省の動きを見ていると、動画投稿アプリ「TikTok」に対する米国政府の動きをほうふつとさせる。
米国では、議会がTikTokを運営する中国のIT大手「ByteDance(バイトダンス)」に、米国での事業を360日以内に米国企業に売却するよう求める法案を可決。それを受けて、4月24日、ジョー・バイデン大統領は法案に署名をして、法律が成立した。TikTokがこの期限までに売却に応じなければ、アプリ配信が米国で禁止されることになる。
TikTokは中国企業のサービスということもあって、米中の経済摩擦に巻き込まれてきた。最初は2020年で、ドナルド・トランプ前大統領が大統領令に署名して、TikTokの売却を命じた。米国人の約1億7000万人が利用しているというTikTokは、中国企業がコントロールしていることで、米国人の個人データを奪うだけでなく、選挙や政治まで操作できてしまうほど影響力が強くなっていて、安全保障の問題になっているというのが理由だった。
TikTok側は、米国人ユーザーの言論の自由を踏みにじり、TikTokを使ってビジネスをしている700万社に壊滅的な打撃を与えると指摘。さらに、TikTokが米国経済に年間240億ドルの貢献をしていることから、経済に悪影響を及ぼすのではないかと主張している。5月7日、TikTokとバイトダンスは今回の法律の差し止めを求めて提訴した。
こう聞くと、日本におけるLINEの立ち位置と似ている。もっとも、日本の場合は、トランプやバイデンのように自国民を守るために強硬な姿勢を明確に見せることはない。だが今回、そんな日本が韓国のネイバーに株式を売却させようと働きかけているのなら、それは日本人の生命と財産を守るという日本政府の責務にはかなうのではないだろうか。
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