今回のミャクミャクの事例をデータで具体的に見ることで、多くの学びがありました。
開幕を機に報道量が増え、SNS上では来場者の体験談を起点にポジティブな投稿が広がっていく。こうした話題化の軌跡は、客観的なデータで見ることで、初めてその規模と熱量を正確に理解できます。
そもそも広報・PR活動の最終目的は、マーケティングPRであれば「売り上げ」、コーポレートPRであれば「株価」や「採用応募者数」といった、具体的な事業成果が想定されます。かつては、広報の効果測定指標として「広告換算費」(メディア露出量を広告費に換算した指標)が用いられてきましたが、これはあくまでメディア露出という「量」の指標に過ぎず、本来の目的である事業貢献といった成果からは離れすぎています。
現代の広報活動に求められるのは、このギャップを埋め、事業への貢献度を可視化すること。そのためには、活動を定期的にチェックする「健康診断」のような、以下の3つの視点が必要です。
まず重要なのは、記事の論調やSNSの反響といったデータから、自社が世間からどう見られているかの「現在地」を客観的に把握することです。
次に、広報活動とビジネス指標の「相関」を見つけ出します。これにより、どの施策が事業に貢献したのか、因果関係を明らかにできます。
(例1)テレビ露出とWebアクセス:テレビ番組で自社製品が紹介された直後に、ECサイトへのアクセス数がXX%増加した。
(例2)新聞掲載と指名検索:新聞で経営者のインタビュー記事が掲載された当日、企業名の検索数がYY%増加した。
このように「Aという広報活動があったから、Bという事業指標が動いた」という相関関係をデータで示すことで、広報活動の価値を具体的に証明できるのです。
データ分析の最終目的は、未来の戦略を立てることです。相関関係が分かれば、成功の再現性を高めるための「次の打ち手」の仮説を立てられます。
(仮説):「テレビ露出はWebアクセスに直結することが分かった。ならば、次は主要なターゲット層が視聴する別番組へのアプローチを強化しよう」
このサイクルを回すことで、広報活動は場当たり的なものではなく、データに基づいた戦略的なものへと進化します。
その際、広報のKPIを活動プロセスに応じて「アクション指標」「アウトプット指標」「アウトカム指標」の3段階で設計すると、現状の課題がより明確になります。例えば、記事掲載数(アウトプット)は多いのに、サイト流入数(アウトカム)が増えないのであれば、露出しているメディアの選定に課題がある、といった改善点が見えてきます。
ミャクミャクの事例で見てきたようなデータ分析のアプローチは、全ての企業の広報・PR活動に応用できる手法です。定期的に報道の論調やSNSでの反響を測定することは、自社ブランドの「健康診断」に他なりません。さらに、露出とビジネス指標の「相関」を見つけることで、広報活動が事業にどう貢献したかの道筋が見えてきます。
勘や経験ももちろん重要ですが、これからの広報・PR担当者に求められるのは、データという客観的な事実に基づいて「次の一手」の仮説を立てる力です。まずは自社の活動に関するデータを集め、現状を把握することから始めてみてはいかがでしょうか。その一歩が、広報を単なる情報発信から、企業の成長をけん引するエンジンへと進化させるのです。
データに基づいた戦略的な提案で、共に広報・PRの価値をさらに高め、事業の成長に貢献していきましょう。
スタートアップ企業やエンターテインメント業界で広報・PRを経験後、2022年より現職。
事業に貢献する統合型PRソリューション、PR効果測定ツール「PR Analyzer」の開発・提供、「月刊メディア・データ」を発行するビルコムにて、自社ツールを活用したデータドリブンなコーポレートコミュニケーションとマーケティングを推進。
自社ブログにて、広報・マーケターに役立つ情報発信も行う。
コーポレートサイト https://www.bil.jp/
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