コロナ禍直撃のビール業界、特にアサヒに苦境が待ち受ける真の理由:“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)
新型コロナで苦境のビール業界。特にアサヒにその影響が直撃。同社本来の「強み」が仇になったと筆者は分析。
新型コロナウイルスの影響で、アサヒビールが苦境に立たされている。直接的な原因は、居酒屋をはじめとする業務用ビールの比率が高く、宴会自粛の影響を受けたことである。業務用がダメなら家庭用を強化すればよいということになるが、話はそう単純ではない。
アサヒは日本では珍しく、明確なマーケティング戦略をもとに事業を展開してきた企業だが、コロナによってその戦略が根本的に崩れてしまった。立て直しにはかなりの時間がかかるだろう。
「業務用ビール」がコロナ禍でピンチ
ビール大手各社における5月の販売動向は、発泡酒や新ジャンル(第三のビール)を含む「ビール類」のカテゴリーで、キリンビールが9%減、サッポロビールが20%減、サントリーが4%減、数量ベースでの公表をやめたアサヒは金額ベースで22%減だった。一方、発泡酒などを含まない純粋な「ビール」の販売実績は、キリンが41%減、サッポロが39%減、サントリーが55%減だった。アサヒは全体の販売数量を公表していないが、主力のスーパードライは35%減となっている。
純粋なビールの販売動向だけを見ると、アサヒだけが大幅に落ち込んでいるわけではなく、むしろ他社よりも影響が軽微にも見えるが、全体の業績という点ではそうはいかなくなる。
アサヒの売上高に占めるビールの比率は高く、しかも、ビールの販売数量のうち居酒屋など業務用の販売ルートが半分を占める。業務用ビールの販売は、宴会自粛で居酒屋が経営不振に陥っていることから急激に減少しており、すぐにこの状況が改善するとは考えにくい。
業務用ビールの販売が落ち込んでいるのは各社共通だが、ビール比率の高いアサヒの場合、業績への影響が大きくなってしまうのだ。
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