店舗を変えるモバイル決済

目指すは“オールインワン決済” 急成長する「Airペイ」の戦略をリクルートに聞くモバイル決済の裏側を聞く(1/2 ページ)

» 2017年12月13日 06時00分 公開
[房野麻子ITmedia]

 FeliCaチップを搭載した「おサイフケータイ」が登場したのは2004年。利用率は横ばいといわれてきたが、2016年に日本でも「Apple Pay」が始まり、中国でQRコード決済が広く浸透してくると、モバイル決済が再び注目されるようになった。それに伴って、店舗向けインフラを提供する事業者も増えてきている。

 リクルートもその1社で、「Airペイ」で決済インフラ事業を展開している。Airペイはモバイル決済業界で初めてApple Payと交通系ICカードの両方に対応したサービスで、導入店舗の伸び率が2016年10月からの1年間で約8倍、取扱高は約15倍というほど大きく成長している。Airペイが急拡大している現状について、リクルートペイメントの塩原一慶社長に話をうかがった。

Airペイ クレジットカードや電子マネーでの決済を可能にする「Airペイ」。店舗側は決済端末(リーダーライター)とiOSアプリを使用する

スマートデバイスを活用したオールインワン決済

Airペイ リクルートペイメントの塩原一慶社長

 決済市場は大きく「使う人」と「使われる場所」に分けられる。リクルートは、クレジットカードの「Recruit Card」を提供し、決済サービスを利用する一般コンシューマー(使う人)を増やす事業も展開しているが、現在、注力しているのは加盟店(使われる場所)開発に当たる「アクワイアリング」だ。

 まず提供開始したのが、iOS端末1つでPOSレジシステムを構築できる「Airレジ」。これとシームレスに連携する決済システムがAirペイだ。これらAirシリーズは、少子高齢化で労働力が不足する日本の労働環境を改善したいという大きな狙いもあるという。

 Airペイは2015年11月にサービスを開始。開始当時、クレジットカードの対応ブランドはVISAとMasterCardのみで、交通系電子マネーにも対応していなかった。その後、2016年12月にJCB、アメリカン・エキスプレス、ディスカバー、ダイナースを追加し、全ての国際ブランドに対応。このクレジットカードのブランド全対応が転機となり、Airペイを導入するところが増えていく。2017年2月からはSuica、PASMO、ICOCAなど交通系電子マネー、同年6月にはApple Payという形でiDとQUICPayにも対応した。

 2015年12月にQRコードを使った決済サービス「Alipay(アリペイ)」「LINE Pay」とAirレジを連携させた「モバイル決済 for AirREGI」を開始し、2017年7月にはビットコインにも対応している。決済手段を限定して注力する事業者が多い中、リクルートのAirペイは多くの決済手段に対応するオールインワン戦略をとっている。

Airペイ AlipayとLINE Payでの支払いに対応した
Airペイ Alipayで支払う際に表示させるQRコード

 ちなみに、Alipayでの決済を利用するのは、ほとんど中国人観光客なので、中国語表記や英語表記に対応している。QRコード決済は「WeChatPay」もよく知られているが、こちらは競合の「楽天ペイ」が対応しており、そこが大きな違いだ。ビットコインに対応している点も強み。ビットコインウォレットと呼ばれるアプリが数十種類存在するが、それに全て対応できるという。

 決済は「広くあまねくユニバーサルなサービスであるべき」(塩原氏)という認識からだ。今は、FeliCaを利用する人もいれば、どんなところでもクレジットカードを使う人、まだまだ現金だという人もいる。これら全てに対応し、業務効率化を目指すのがリクルートのスタンスだという。

POSレジシステム「Airレジ」とシームレスに連携

 Airペイを利用するには、店舗側にはリーダーライターとiOS端末があればOKだ。AirペイのアプリはiOS端末のみに対応しており、Android端末の対応予定はないとのこと。提供しているリーダーライターは、磁気ストライプのスワイプ、ICチップの読み書きと暗証番号入力、Suica、PASMOなどのタッチ(非接触)の決済手続きが可能。レジの操作自体はiPhoneやiPadで行う。

 ここでは、カフェでコーヒーを購入する場合を想定。Airレジでコーヒーの購入手続きを行うと、決済手段が選べるようになる。画面上にリクルートが展開している決済方法が全て表示され、クレジットカード払いや交通系電子マネーでの支払いを選ぶと、シームレスにAirペイのアプリに移行する。

 アプリが入ったiOS端末と決済端末はBluetoothで接続。クレジットカードやSuicaカードなどをリーダーライターで読み取り、決済する。Suicaカードなどは読み取り面にかざし、クレジットカードのICチップを利用する場合は、お客さんにリーダーライターで暗証番号を入力してもらえば完了だ。接続されているプリンタでレシートも印刷される。

Airペイ Airペイアプリで注文を入力
Airペイ 決済方法や金額を確認して会計する
Airペイ クレジットカードで決済
Airペイ 電子マネーで決済

 なお、Airレジを使っていなくてもAirペイは利用できる。その場合、POSレジは使えないため、リーダーライター端末に直接、金額を打ち込んで決済する。

 リーダーライターは、セキュリティの国際基準を満たしたMiura Systemsのもの。持ち運べるコンパクトサイズでありながら、NFC Type A/Bに加え、FeliCaを利用するためのType Fに対応している端末だ。

 Apple Payはリーダーライターの性能で読み取りのよしあしが左右されるケースもあるが、この端末はJR東日本の基準クリアしている。読み取り精度は、端末がその方式に対応していればいいというわけではなく、アプリケーションの実装力で差が出るという。「各社、同じ端末を採用しながらも、交通系電子マネーに対応していないところもあります。われわれはJRの厳しい基準をクリアしているので自信を持っています」(塩原氏)

「Apple Payで」と言って支払える

 Apple Payはさまざまなカードを登録でき、メインカードとして登録されたカードは簡単な操作で支払いが可能だ。AirペイのアプリはApple Payボタンを実装しており、iPhoneやApple Watchのメインカードが何かを自動判別するという。本来、Apple Payで支払うときも、「Suicaで」「iDで」など、お客がブランドを指定する必要があるが、Airペイの場合は「Apple Payで」と言えばいい。お客も店舗側もブランドを意識することなく支払い手続きができるのが利点だ。

Airペイ AirペイアプリはApple Payボタンを実装している

 「外国の方とやりとりする場合に、言葉が聞き取れず分からない場合もあるので、そういった場合に便利だと思います。もちろん、ブランドを指定して支払っても問題ありません。両方対応できるように設計しています」(塩原氏)

 このメインカード自動認識の機能は業界で初めてリクルートが導入。現在はローソンのレジもApple Payのメインカードを自動認識するそうだ。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2025年08月29日 更新
  1. 「au Starlink Direct」はどこまで実用的? 24時間の船旅で分かった、衛星通信のリアルな使い勝手 (2025年08月27日)
  2. 一部「FeliCa」に脆弱性、ソニーが公表 Suica、iD、nanaco、楽天Edyは「安心して利用して」──各社が声明 (2025年08月28日)
  3. 「Pixel 10/10 Pro」実力検証 スマホ体験を変える2つの新機能、驚きの「100倍ズーム」は使える? (2025年08月28日)
  4. 衛星越しでのデータ通信に対応した「au Starlink Direct」 圏外エリアでの登山で役立つ ただしアプリは“要対策” (2025年08月29日)
  5. 3COINSで1650円の「真空吸着マグネットリングスタンド」なら、iPhoneやスマホをどこでも手軽に固定できる (2025年08月28日)
  6. “パナソニックのケータイ”が令和に復活──USB Type-C充電や約8日間の待ち受けが可、「KX-TF400」を欧州市場向けに発売 (2025年07月18日)
  7. 「低速」でお得に利用できるスマホプランは? 大手キャリア/主要MVNOで比較、“低速で使い放題”もあり (2025年08月27日)
  8. 「arrows Alpha」開発者インタビュー 再定義した“ハイエンド”の中身、「強さ」「安心」に込めた思い (2025年08月28日)
  9. au Starlink Directで「衛星データ通信」開始 圏外でもGoogle マップ、X、YAMAPなどで情報取得――世界初 (2025年08月28日)
  10. 東海道・山陽・九州新幹線の「エクスプレス予約」がサービスの仕様を2026年夏から順次変更 チケットレス乗車は「交通系ICカード」に一本化 (2025年08月26日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー