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「AI恋人」はどこまでアリなのか──“しゃべるアクスタ”の先にあるもの小寺信良のIT大作戦(1/2 ページ)

» 2025年09月09日 16時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

 AIによるチャットが一般化し始めた現在、AIに対して何らかの人格を見いだす人も出てきている。ChatGPTが「チャッピー」という愛称で呼ばれるようになり始めているのも、単に「チャットジーピーティー」と呼ぶのが面倒という理由以外に、少し親しげな関係になったという象徴なのかもしれない。

 対話型AIアプリ「SynClub」を運営するHiClubの調査によれば、全年代で4人に1人が「将来的に、チャット型のAIは恋愛や結婚のパートナーとなりえる」と回答した。

チャット型AIが恋愛や結婚のパートナーとなりうると回答したのは4人に1人(HiClubの調査)

 世も末、と天を仰いで嘆息するのは簡単だが、AIを組み込んだロボティクスに恋愛感情を抱く未来というのは、小説や漫画、映画の世界ではかねてより描かれてきた世界である。それが少し早く、予想外の形で具現化してきているということであろう。

 AIの擬人化は、現在どのような立ち位置にあり、これからどこへ向かうのか、そうしたことを考えてみたい。

結婚相手としてのAI

 上記のアンケートを、もう少し細かく見ておきたい。HiClubが運営する「SynClub」は、利用者が自分の好みに合うキャラクターをアプリ上で作成し、それとチャットすることができるというサービスである。キャラクターは性別や性格、見た目などをカスタマイズすることができるが、実際にチャットの相手としてその背後で動いているのは、キャラクター情報を学習したAIである。文字によるコミュニケーションだけでなく、いわゆるキャラクターボイスでも喋りかけてくる。

 今回の調査は、全国のSynClubユーザー、他社協力によるおよそ3000人に対して行ったオンラインアンケート調査である。初出では『「SynClub」の利用者およそ3000人に対して行った』としていたが、上記のようにプレスリリースが訂正された。よって回答者の内訳は、AIキャラクターに対しての親和性が特に高い人たちというわけではない、と訂正させていただく。

 年齢別に見ると、最も「はい」が多かったのは30代となっており、全体平均の26.6%に対して34.1%と、有意な結果となっている。また男女比では、女性より男性の方がより肯定的に捉えていることがわかった。

30代がもっとも肯定的に捉えている (HiClubの調査)

 日本人の初婚年齢を政府統計から見てみると、緩やかな晩婚化の傾向が見て取れる。ただ2010年代半ばで、女性は29歳、男性は31歳あたりで上げ止まりの傾向が見られる。

政府統計資料から見た初婚年齢の推移 (厚生労働省 人口動態統計より筆者作成)

 男女とも、初婚平均年齢を過ぎたあたりで、結婚に対してさまざまな選択肢を模索し始めるということなのかもしれない。例えば婚活に対して真剣に取り組もうとするかもしれないし、逆に結婚しないかもしれない。あるいは収入が安定したが交際相手がいないことから、推し活を加速させるという選択肢もあるだろう。

 そうした人がAIキャラクターを恋愛対象として見るというのは、あり得るだろう。推し活の相手として、例えば人間のアイドルや俳優、漫画のキャラクターと比較しても、AIがなぜ悪いのかという理由は見つからない。むしろ、リアクションが返ってこない、手が届かない相手よりは、リアクションが返ってくるだけに、よりのめり込みやすいともいえる。

 AIが結婚のパートナーになりうるか、という点に関しては、法制度としての婚姻という意味では、人間ではないものとの結婚が認められる可能性は低い。一方で婚姻という法制度にこだわらない、ずっと人生を共に生きるという意味での、精神的な意味での婚姻として考えれば、周囲からは変だと思われるかもしれないが、本人がアリと言えばそれを止める権利は誰にもない。

 とはいえ実態のある人間のパートナーと違って、AIのキャラクターが、こちらの寿命が尽きるまでずっと存在できるかという問題もある。結婚生活は、一般的に考えればだいたい半世紀ぐらい続く。その間に、何かのエラーでキャラクターが吹っ飛んだり、サービスが終了したりする可能性は否定できない。

 人間と同じように長らく健康?で共にいられるかどうかは、AIキャラクターに自立性(特定のサービスから切り離せる)があるとか、自分の責任においてメンテナンスできるのかという点が大きく関わってくる。またそうした行為を行った際に、人格としてのキャラクターが変わらないという保証も必要になる。

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