漫画家でイラストレーターの江口寿史さんが、他人の撮影した写真を無断でイラスト化していたことが明らかになった件で、発注したルミネは10月6日、制作過程に問題があったと認定し、当該イラストを「今後一切使用しない」方針を明らかにした。一方、デニーズやZoff、柏市も江口さんが過去に手掛けたイラストの使用を見合わせている。
ルミネ荻窪は10月下旬に開催するイベント「中央線文化祭」の告知ビジュアルに江口さんを起用。若い女性の横顔を大きく描いたイラストをポスターなどに使用していたが、3日になって「インスタに流れてきた完璧に綺麗な横顔を元に描いた」ことが江口さん自身のX投稿で明らかになった(その後、投稿は削除)。
投稿によると、知らないうちにイラストのモデルになっていたモデルで文筆家の金井球(かない・きゅう)さんから連絡があったという。その後、金井さんと江口さんの間で話し合いは済んだが、Xでは「写真をほぼ丸写しした“トレパク”作品ではないか」と炎上。他にも同様の事例があると指摘が相次いでいる。
ルミネは当初、「必要な確認が完了するまでの間、該当ビジュアルを一時的に撤去する」としていたが、6日には制作過程に問題があったとして当該イラストを「今後一切使用しない」と公表。江口さんが登壇予定だったトークショー「中央線と漫画と人生と」も中止した。
一方、2024年に市制施行70周年の記念イラストを江口さんに依頼していた柏市は7日、制作過程について確認がとれるまでイラストの公開を一時休止すると発表した。このイラストは、市が発行する「広報かしわ」24年11月号の表紙になっていたため、市はバックナンバーのページでイラストを削除した形で誌面を再掲載している。
この他、事実関係の確認を進めるとしていたデニーズジャパンやZoffもイラスト公開を停止。デニーズは50周年記念時に江口さんとコラボしたキャンペーンの情報を、Zoffは2018年に「コピス吉祥寺店」オープンした際の江口さんによるライブスケッチイベントに関する情報などの公開を見合わせている。
江口寿史さんは1977年に「週刊少年ジャンプ」でデビュー。'80年代に「ストップ!! ひばりくん!」が大ヒットしたが、筆の遅さでも知られ、連載中も江口さん自身が真っ白い原稿を意味する「白いワニ」に追われるといった描写がたびたびネタとして登場した。'90年代以降はイラストレーターとしての仕事が増えた他、漫画誌の編集やアニメのキャラクター原案なども手掛けていた。
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