成人漫画まねたわいせつ事件発生 警察が作者に「配慮」求める? 報道に作者がコメント
強制わいせつ事件の容疑者が、「成人向け漫画を模倣した」と供述したため、県警が漫画の作者に対して配慮を求めた――との報道に漫画家本人がコメント。「『表現の自由が脅かされた』とか『警察の圧力に屈した』という類の話だとは思ってほしくない」としている。
少女の身体を触った強制わいせつ容疑などで6月12日に埼玉県警に再逮捕された男が、「成人向け同人漫画をまねた」と供述したため、県警が漫画の作者に対して、作品が模倣されないよう配慮を求め、漫画家が了承した――との報道があり、「表現の自由の侵害につながるのでは」などと議論になっている。
この件について漫画家本人がこのほど、Twitterでコメントした。警察との話し合いは非常に穏やかであり、警察に「似た作品を書く気にならない」などと話したのは「僕個人の思ったこと」と説明。「『表現の自由が脅かされた』とか『警察の圧力に屈した』とか『前例ができた』とかいう類の話だとは思ってほしくない」と述べている。
再逮捕されたのは、埼玉県の矢崎勇也容疑者(35)(別のわいせつ事件などで起訴)。昨年1月、市内の女子中学生宅に「放射能を調べる調査をする」などと言って侵入し、「死にたくなければ声を出さないで」などと言い、体を触るなどわいせつな行為をした疑いがもたれている。「ネットで見た成人向けの同人漫画をまねてやった」と供述しているという。
毎日新聞Web版の14日付けの記事には、県警が7日に漫画家を訪ね、作品内容が模倣されないような配慮と、作中の行為が犯罪に当たると注意喚起を促すことなどを要請し、漫画家は「少女が性的被害に遭うような漫画は今後描かない」と了承した――と書かれており、「警察による“配慮”の要請は、表現の自由の侵害につながる」「警察の圧力に表現者が屈する前例ができた」「漫画家が萎縮する」などと議論になっていた。
容疑者に模倣された漫画「がいがぁかうんたぁ」の作者・クジラックス氏は自身のTwitterで11日以降、警察から受けた訪問について説明。「内容は『報告と相談』といった感じ」であり、自宅リビングでお菓子とお茶を飲みながらの「ふにゃ〜っとした」話し合いだったとし、作品を作った理由などについて「とても誠実な態度でお話しを聞いてくださった」という。
毎日新聞の記事にある「漫画家は『少女が性的被害に遭うような漫画は今後描かない』と了承したという」との内容が事実かどうかとの問い合わせにも、15日付けで回答。「がいがぁかうんたぁ」は4年ほど前の作品であり、今は描きたいものが変わっている上、犯罪者が「がいがぁかうんたぁ」を見て真似たとの報告を受けたため「僕はいよいよ『がいがぁかうんたぁ』っぽいものは描く気にならないと思う」などと話したが、これは「僕個人の思ったこと」であり、「『表現の自由が脅かされた』とか『警察の圧力に屈した』とか『前例ができた』とかいう類の話だとは思ってほしくない」としている。
また、「警察の方の〈作品内容が模倣されないような配慮〉のお願いだって中々曖昧だと思う」とし、警察とは「抗力も保障もない極めて曖昧なお話」をしたが「『こんな事件2度と起こらなければいいのに』という気持ちは同じだったと思っている」などと説明した。
参議院議員の小野田きみ氏(自由民主党)は15日、Facebookで、この件について警察庁刑事局の担当者と話した内容を報告。「『少女が性的被害に遭うような漫画は今後描かない』というような了承を作者にとったという事実は確認できず、そういった圧力も加えていないとのことだった」としている。
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