減塩食を“しょっぱく”感じる箸型デバイス、明大とキリンが開発 電気で味覚を操作
明治大学とキリンホールディングスは、減塩食品の味わいを増強させる箸型デバイスを開発した。減塩食を食べたときに感じる塩味が1.5倍程度に増強されることを世界で初めて確認したという。
明治大学の総合数理学部先端メディアサイエンス学科の宮下芳明研究室とキリンホールディングスは4月11日、減塩食品の味わいを増強させる箸型デバイスを開発したと発表した。このデバイスで独自開発の電気刺激を与えると、減塩食を食べたときに感じる塩味が1.5倍程度に増強されることを世界で初めて確認したという。
ごく微弱な電気を口の中に与えることで、塩化ナトリウムの塩味やグルタミン酸ナトリウムの旨味の基となるイオンの働きを調整。疑似的に食べ物の味を濃さを変えられるという。
40歳〜65歳の減塩食を食べたことのある男女36人を対象に、このデバイスの臨床実験を実施。一般食品を模したサンプル(食塩を0.80%含有)と減塩食を模したサンプル(食塩を0.56%含有)を箸型デバイスを使って食べてもらい、どのように塩味を感じたか評価した。
その結果、減塩食を模したサンプルを食べるときに、開発した電気刺激を箸型デバイスに与えることで、電気刺激を与えない条件と比較して塩味が1.5倍程度増強される結果が得られたという。その塩味の強さは、一般食品を模したサンプルと同等であったため、通常の食事と同等の塩味を提供できることを示唆するとしている。
宮下研究室とキリンは「電気刺激を用いて塩味を増強する効果を、食器に活用することで、薄味の減塩食に対する味の満足度を高められる可能性を見いだした」と説明。生活習慣病の予防などのために、減塩食などの健康な食生活の満足度を高められるサービスの開発を目指す。
この研究成果は「減塩生活者を対象とした電気味覚による塩味増強効果の調査」として、第26回一般社団法人情報処理学会シンポジウム(インタラクション2022)で3月2日に発表した。
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