120年以上未解決だった“古典パズル”の証明に成功 日本人研究者が成果 「解が存在しない」を実証
北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)と米マサチューセッツ工科大学の研究チームは、120年以上未解決だった古典パズル「デュードニーの裁ち合わせパズル」の証明に成功したと発表した。
北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)と米マサチューセッツ工科大学の研究チームは3月10日、120年以上未解決だった古典パズル「デュードニーの裁ち合わせパズル」の証明に成功したと発表した。
与えられた多角形をなるべく少ないピースに切り分け、並べ替えて別の多角形に変えるパズルは「裁ち合わせパズル」といわれる。そのうちの有名な問題の一つが、デュードニーの裁ち合わせパズルだ。これは“正三角形を4つのピースに切り分けて正方形を作る”という問題で、4ピースよりも少ない解があるかは120年以上未解決のままだった。
研究チームは数年間この問題に取り組み、JAIST所属の鎌田斗南助教が新しい証明技法を考案。このパズルの最適解は4ピースであり、3ピース以下の解が存在しないことを証明した。
研究チームの証明技法では、まず3分割の方法となり得る組み合わせを列挙。そのうち実現の可能性がある組み合わせのみに絞り込んだ。さらに、正方形と分割した図形の頂点と辺の関係から組み合わせ図を作成。これらから導き出せる連立方程式が矛盾していることを指摘し、3分割以下の解が存在しないことを証明した。
従来の証明技法では、具体的な切り方を示して“存在する”ことしか示せず、最適解を数学的に証明するのは難しいとされてきた。そんな中、鎌田助教が考案した証明技法では「裁ち合わせできない」という不可能性を数学的に証明できることが世界で初めて明らかになった。
「この技法により、今後は他のパズルでも不可能性が示せる可能性があるとともに、この技法をさらに精緻化すれば、今まで示されたことのない、新たな裁ち合わせの発見にもつながる。また、裁ち合わせはパッチワークなどの工芸にも関係が深く、今後の多様な応用にも期待できる」(研究チーム)
研究成果は、世界中のプレプリントを保存・公開するWebサイト「arXiv」2024年12月5日付で公開されていた。
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