ニュース 2002年12月6日 08:42 PM 更新

佳境を迎えたP2P裁判――意見書提出の苫米地氏に聞く

P2Pサービス「ファイルローグ」の裁判が、大詰めを迎えている。P2Pの未来のために、ファイルローグを潰すべきではない、と主張するCRLの苫米地社長に、話を聞いた

 日本MMOのP2Pサービス「ファイルローグ」を、レコード会社19社などが訴えることで始まった裁判が(4月9日の記事参照)、大詰めを迎えている。12月2日に第4回尋問が行われており、来年1月29日午後1時半には、損害賠償額の詳細な算定方法を除いて、なんらかの判決が示される見通し。こうした中で、コグニティブリサーチラボ(CRL)の苫米地英人社長が東京地方裁判所に意見書を提出するなど、議論も活発化している(11月26日の記事参照)。

 今回、ZDNetは苫米地氏にインタビューを行い、「日本の健全な発展のためにP2Pを禁止すべきではない」と主張する理由を聞いた。同氏は、人工知能の研究も手がける脳機能学者。政府予算の下でP2P技術の開発も手がけるなど(総務省の報道発表資料参照)、同分野への造詣も深い。

P2P禁止は「日本にとって副作用が大きい」

ZDNet:まず、4月9日の仮処分を不適切だと考える根拠を、教えてください。

苫米地:理由はいくつかある。そもそも、この仮処分が音楽業界が最終的に目指す“違法コピーの流通阻止”に効力があったか、疑問であること。またそれ以上に、この命令が今後さまざまなな“副作用”を引き起こしかねないという重大な懸念がある。

 今回の仮処分が判例となって、今後まともなP2Pサービスが提供できなくなるようなら、日本という国全体にとって大きな不利益になる。P2Pは、大量のアクセスが1カ所に集中して生じる“ブロードバンドエクスチェンジボトルネック”の問題を解決する、有用な技術。現状は、たまたま著作権を乱す違法な利用が中心になっているだけで、P2Pと“違法性”には本質的に関係がない。判事側は、それを正しく理解しているのか。私は、P2Pをきちんと評価した形跡さえないと考えている。

 この問題は、広く社会の中で議論してくべき問題だ。それこそ、国会の答弁で取り上げられるようなことがあっていい。

「ファイルローグにDRM技術を導入させよ」

ZDNet:意見書の中で、ファイルローグにCRLのDRM(Digital Rights Management)技術を導入することを提案されています。具体的な話し合いはされているのですか。

苫米地:実は今年の2月頃、人づてに紹介をうけた松田君(日本MMOの松田道人社長)がやってきて、「このままではサービス存続が難しい」というので、CRLのDRM技術を導入する交渉に入った。

 ファイルローグに著作権管理機能を組み込むことは、技術的に可能だ。中央サーバ側で演奏家の名前、CDのタイトルのリストを用意して、アップされたファイル名がリストに記載されていたものだった場合、これを削除すればいい。タイトル名は、1文字だけ変更してあるなど多少の“ズレ”にも対応させられる。

 もっとも、日本MMO側はファイルローグに関してソースコードのライセンスを持っていない。仮にシステムそのものを書き換えると、リバースエンジニアリングになってしまう。運用にあたっては、システムの外側になんらかのモニタープロセスを働かせる方式になるだろう。このため、100%リアルタイムの処理としてアップされたファイルをはじくことは難しいが、5−10分の遅れでなら対処することは可能だ。

 CRLでは、システム構築の見積もりを出すところまで話が進んでいた。ただし、松田君の方で資金調達を試みているうちに、仮処分も出て、ファイルローグ自体がサービスを実質休止してしまった。このため、現在は計画が頓挫している状況だ。

音楽業界は「まず潰す」姿勢だ

ZDNet:音楽業界の姿勢にも、ご不満があるようですが。

苫米地:日本レコード協会は、初めから有無を言わさずファイルローグを潰しにかかっている。著作権の問題を解決した上で、サービスも存続させる可能性を探っていない。

 音楽業界は、P2Pを認める方向に路線を変更すべきだろう。そもそも、本気で著作権を守ろうとするなら、ピアに直接、DRM技術を組み込んだクライアントをインストールさせた方が管理しやすい。各家庭に10M、100Mbpsのアクセス回線が普及する中で、まともに音楽配信をしようとするなら、方法はP2Pしかないし、P2Pの方が安全だ。

 今回の裁判にあたり、日本レコード協会側は大物弁護士ばかり、十数人をズラリと揃えて“一大弁護団”を結成した。松田君を相手取って、3億6500万円もの損害賠償を請求しているが、『そのうち半分は弁護士報酬で飛ぶんじゃないか』とウワサがあるほどだ。それだけのお金と、労力を費やすことができるなら、なぜP2Pの技術開発を試みないのか。しかも、P2Pが世間の話題に上ったのは、昨日今日の話ではない。

 私は、2050年の世界にコンテンツ配信サービスがあるとしたら、それはきっとP2Pだろうと考えている。事業が成功する可能性は、極めて高いだろう。

(文中敬称略)



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[聞き手:杉浦正武, ITmedia]

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