リビング+:ニュース 2003/07/17 22:09:00 更新


接続料で行政訴訟 〜5社の言い分は

KDDIなど5社は、接続料値上げの認可取り消しを求め、訴訟を提起した。5社がどのような理論武装をして訴訟に望んだのか、その言い分を聞いてみよう。

 KDDI、ケーブル・アンド・ワイヤレスIDC、日本テレコム、パワードコム、フュージョン・コミュニケーションズの5社は7月17日、NTT東西地域会社の接続料が値上がりすることに対し(記事参照)、総務大臣による接続約款変更の認可取り消しを求め、訴訟を提起した。これに伴い、同日5社の社長が都内で記者会見を行った。

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「接続料値上げは自由競争を妨げ、NTT独占につながる」と話すKDDIの小野寺正社長

 接続料とは、NTTのインフラに設備を接続する事業者が、NTTに対して支払う料金。接続形態によって「GC接続」と「ZC接続」の2種類に分かれるが、このうちZC接続が今年度から、4.78円/3分から5.36円/3分と大幅に値上げされた(解説記事参照)。これにより、各社とも数十億円単位の負担増が見込まれるという。

 事業者の負担が増えれば、そのしわ寄せはエンドユーザーに回る。今のところ、各事業者ともユーザー料金値上げはしない方針だが、企業としての体力を削られるため「本当は値下げをしたくても、できなくなる」(日本テレコムのウィリアム・モロー社長)。

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上段左:日本テレコムのウィリアム・モロー社長、右:パワードコムの白石智社長、下段左:フュージョン・コミュニケーションズの角田忠久社長、右:ケーブル・アンド・ワイヤレスIDCのフィル・グリーン社長

5社の「理論武装」とは

 5社が訴訟で要求するのは、ひとまずは値上げの撤回だ。争点とするのは、以下のような項目となる。

 まず、“約款変更の手続きが、適正でない”こと。約款の認可申請が行われたのは、今年の4月22日だが、必要とされる各事業者に対する意見募集を行わずに、即日認可された。これは手続きに違反がある、というわけだ。

 また5社は、約款の効力を省令施行日に遡及したことも「不利益遡及」で、一般的な法の原則に外れると問題視している。

 接続料をめぐる審議では、昨年9月に情報通信審議会が「NTT東西の接続料は、不均一にするのが適当」とする答申を行っている(記事参照)。ところが、その後改正案が示され、東西料金は均一とすることに決められてしまった。このように、答申を覆すのも変更過程として誤りだという。

 そもそも5社は、NTT東西で接続料を均一にすることに反対している。パワードコムの白石智社長は、自社サービスを東日本地域でのみ提供していることに触れ、本来安くすむはずの接続料が、西日本地域に合わせることで高くついてしまうことに、不快感をあらわにする。

 「本来、われわれの収益となるものが、NTT西日本を救済する原資になっている」(白石氏)。5社は、東西均一料金を非難するため「これは独占禁止法が禁止する『不当な取引制限』にあたる」との理論を構築している。

“精算”“NTSコスト”でも問題あり?

 新しく導入された「事後精算制度」が、電気通信事業法で規定されていないことも、5社の攻撃材料だ。

 新約款では、接続料が実態に合わない場合を想定し、後で行われるべき精算のあり方を定めている(解説記事参照)。だが、「電気通信事業法には、そんな(精算の仕組みを定めた)条項はない。われわれは、これを『電気通信事業法が許容していない』と解釈する」(KDDIの小野寺正社長)。

 また、5社は継続的に「NTSコストは接続料に含むべきでない」と主張してきた。NTSコストとは、通信料に依存しないコストのこと。具体的には、き線点に設置される装置「き線点RT」にかかる費用などを指す。

 これを接続料に含めず、加入者に直接負担させると、電話の基本料が上がる代わりに、接続料が下がる。(解説記事参照)。「海外では、NTSコストは接続料に含まれていない」(ケーブル・アンド・ワイヤレスIDCのフィル・グリーン社長)。NTSコストを含めると、適正な原価に基づかない接続料設定となると主張した。

「政策の転換を防ぐ」

 今回、各事業者が口をそろえて主張するのは、「接続料値上げを認めてしまうと、これまでの流れに逆行することになる」ということだ。

 電気通信事業法では、第1章第1条に「公正な競争を促進し、利用者の利益を保護する」べきであると明記されている。接続料を値下げすることが、NTTの独占を排して事業者間の競争力を高め、ユーザーの利益につながる――というのが、5社の主張だ。

 「われわれが2002年に新規参入した際は、競争を促進するため接続料を下げこそすれ、上がることはないと聞いていた。国の施策が変わることをおそれる」(フュージョン・コミュニケーションズの角田忠久社長)。

 KDDIの小野寺社長も、政策が転換されつつあるとの、危機感を持っていると話す。

 「不透明な手続きの中で、(接続約款が)なし崩し的に変更された。これではNTTの独占につながる。今後はこの件を、公の場で議論していただく」。

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関連リンク
▼KDDIのニュースリリース

[杉浦正武,ITmedia]



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