リビング＋：Yahoo！BBに聞く、高速化の実情

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2003/07/29 21:23:00 更新

シリーズ：20Mbps超ADSLの検証
Yahoo！BBに聞く、高速化の実情

「高速化した」「いや、それほどでもなかった」と感想が飛び交う20Mbps超サービス。高速化の実情についてソフトバンクBBの技術本部、牧園啓市本部長に話を聞く機会を得た。

　20Mbps超ADSLサービスが始まった。当サイトでも「フレッツ・ADSLモアII」のレビュー記事を掲載しているが、実際に導入したユーザーから通信速度が「上がった」「それほど上がらなかった」など、さまざまな声が聞かれる。

　今回は、高速化の実情についてソフトバンクBBの技術本部、牧園啓市本部長に話を聞く機会を得た。「Yahoo! BB 26M」で、どれほど速度が向上するのか探った。

距離・伝送損失に注意

　同社は26Mサービスで、フィールドデータを公表していない。もっとも、NTT局舎からの距離とスピードのイメージ図は既に公開している（記事参照）。

　図を見ると、12Mbps以上の通信速度を期待できるのは、やはり自宅がNTT局舎から近距離にあるユーザーに限られることが分かる。牧園氏も、「著しく通信速度向上の恩恵を受けるのは、（NTT局舎から）2キロ前後までのユーザー」と話す。

　もっとも、「かなりの数のユーザーが、2キロ以内にいる」ともコメント。同氏はまた、テストでは12Mbpsユーザーの全般に、ある程度のメリットが確認されているとした。

環境に応じてプロトコルを変更

　距離に関していえば、もう1つ注意したいことがある。新サービスでは伝送方式として、G.992.5 Annex A（OL）を採用している。これは同社が「慣れており、自信を持って提供できる」（同）というAnnex Aベースの技術で、下りに利用する帯域を拡張するほか、12Mbpsサービスでも利用したオーバーラップ方式を組み合わせたもの。しかし、このG.992.5 Annex A（OL）には、現状で“距離制限”がついている。

　情報通信技術委員会（TTC）は7月9日、各種の伝送方式についてスペクトル適合性確認の結果を公表した。この際、G.992.5 Annex A（OL）は「収容制限なし・線路長制限あり」の「クラスC」に分類されている。TTCの報告書（PDFファイル）で確認すると、同方式は2.5キロまでしか保護判定基準値を満たしていないことが分かる。

　牧園氏は、NTT局舎から2.5キロ以上離れたユーザーには、G.992.5 Annex A（OL）が使えないと認める。「2.5キロ以遠のユーザーには、それぞれ最適なプロトコルでサービスを提供する。（ユーザー環境に応じたプロトコルの切り替えは）従来の12Mbpsサービスでもやってきたこと」（同）。

　具体的に、どの環境でどの伝送方式に切り替えるかといった詳細は、明らかにされなかった。

ハードウェアの性能向上

　Yahoo！BB 26Mで、もう1つ注意したいポイントがハードウェアの性能向上だ。同サービスでは、高速化に対応した新型トリオモデム「Yahoo! BB トリオモデム26M」を提供している。

　牧園氏は、新サービスでは設備面で、従来のものと違いがあることを強調する。具体的には、DSLAMやトリオモデムでチップ、回路設計が改善されており、「ラボの結果では、性能向上が認められた」（同）。

　このため、距離に関わらず通信速度にプラスの影響があるとした。

さらなる高速化は？
　　牧園氏は、今後のさらなる高速化について「現状では、まだ決まっていない」と多くを語らない。最大50Mbpsを実現する“クアッドスペクトラムADSL”が登場すると思われるが（記事参照）、同氏はこの新規格導入に、極めて熱心に取り組む……という風には見えなかった。

ソフトバンクBBの技術本部長、牧園氏
　「高速化に向けた取り組みは、やめるわけにはいかない。ほかの事業者と同じ時期に、同じようなものを提供できるだけの準備はしている」（同）。とはいえ、どちらかといえばYahoo！BBのインフラの上で、どのようなアプリケーションを利用してもらうかに、思いをめぐらせているようだった。
　同社のIP電話サービス「BB Phone」は、既に250万を超える加入者を集めている。また、無線LANサービスをセットにした「無線LANパック」の利用者も、徐々に増えつつあると話す。「新規加入者の3割は、無線LANパックをつけている。累計でも、1割程度がサービスを利用している」（同）。最近では、BB Gamesにも期待しているという。
　同氏はまた、2～3Mbps程度のスループットが出ていればブロードバンドサービスを提供できるとコメント。このセリフは、「それだけの速度が出ていれば、無理に高速化を追求せずともよい」と、とらえることもできそうだ。