リビング+:特集 2003/08/06 16:20:00 更新

特集:魅惑のビデオチャット・ワールド
“チャット先進国” 〜韓国の場合

日本のビデオチャットの将来を考えたとき、参考になるのが韓国での実態だ。若者の間では、見知らぬ人とチャットでしゃべり、その日のうちに待ち合わせて遊ぶ「ポンゲ」と呼ばれる行動形態も見られるようだが……

 日本のビデオチャットの将来を考えたとき、参考になるのが“チャット先進国”こと韓国での実態だろう。あちらのユーザーは、見知らぬ人同士でも臆することなくチャットを行い、交友関係を広げていると聞く。

 それでは、実際のところはどうなのか? 韓国のインターネット事情に詳しい、ガイアックスのコミュニケーション企画部、許賢(Hur Hyunn)氏に話を聞いた。

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許氏は、父親が韓国人、母親が日本人。10歳までは国内で暮らしたが、その後韓国で生活し、米国留学などを経て、ガイアックスに入社している、

PC房でビデオチャット

 韓国で、ビデオチャットを行う際に利用するデバイスは、やはりPCだ。日本同様、1000円ほどのWebカメラを接続する場合が多い。

 それでは、どこでビデオチャットを行うのか。気ままな会話を楽しむためには、やはり自宅で……と考えがちだが、許氏はオンラインゲームカフェ、いわゆる“PC房”での利用が多いと話す。

 「たとえば、チャットでナンパをしようと考えたとき、自宅では居間にPCがあるのでできない、というユーザーも多い(笑)。もちろん、自宅でコッソリ話をしたいケースもあるので、そのあたりは使い分けている」(許氏)。

 PC房では、数十台のPCが用意されているが、そのうち一部にWebカメラが接続されている。「たとえば30台PCがあって、壁際の一角だけ、6台にWebカメラがついている」(同)といった具合だという。ユーザーはここでビデオチャットソフトを立ち上げ、通常8名程度と同時にチャットを行う。

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PC房の利用イメージ(2001年8月の記事より抜粋)

 韓国の若者は、こうした場で見知らぬユーザーと会話をし、意気投合すれば即日会う約束をとりつけてしまう。このように、その日に知り合い、会うことを「ポンゲ」(=韓国語で「雷」の意)という。

 「私も見ていて、なんでそんなに展開が早いのかと思う(笑)。約束の場所に行って、出会ったり、すっぽかされたりしているようだ」。

韓国でも“顔出し”は抵抗がある

 ビデオチャットをする際に、気になるのはユーザーの“顔出し”比率。昨日の記事ではYahoo!チャットの様子をお伝えしたが、こちらの場合、自らの映像を公開しているユーザーは、かなり少ない印象をうけた。しかし、韓国のユーザーはより積極的に、自分の映像を公開しているのではないか?

 だが、許氏はこの見方に対し「少し思い込みが強すぎる」と苦笑する。

 「韓国でも、インターネット上で匿名性を大事にするのは同じ。顔を出すことは抵抗がある。チャットをしていた場合、『どちらが先に顔を出すか?』でかけひきをしたりする」。相手が女の子ともなれば、やはり男性ユーザーは顔を見たいものだが、かなり口説かなければならないケースもあるという。

 許氏が見るかぎり、やはりビデオチャットを利用するのは、外見にそれなりの自信があるユーザーが多いという。そうでない人は、アバター(ネット上で自分の代わりになるキャラクター)を表示させているようだ。

 「ちなみにPC房では、たまに女の子が化粧をして、照明の加減をバッチリ調節してビデオチャットに望む、という光景が見られる。韓国の若者は、口々に『照明にだまされるな!』と言い合っている」。

“チャットは危険”との指摘もあるが……

 許氏は、若者の大半は、こうしたチャットコミュニケーションを利用していると話す。そのうち、仲間うちの会話ではなく「見知らぬユーザーと話した」ことがあるユーザーは、「8割とまではいかないが……6割ぐらいだろうか?」。

 ユーザーが不特定多数の人間と接触する機会がふえれば、中には危険な目にあうこともある。実際、韓国でもチャットが犯罪に利用されたケースは、稀ではない。

 いわゆるネット版“美人局”にあう者や、自分が映ったビデオ映像が流出するなどの肖像権侵害にあう者、また、ネットの出会いがきっかけで、凶悪犯罪に巻き込まれた者などが現れ、社会現象として問題視されているという。

 こうした中、政府としてもネット上の警察にあたるサイバーポールを動員して、取り締まりを行っている。もっとも、やみくもに出会い系チャットを封鎖するといった過激な規制は行っていない様子だ。これは、ネット上の捜査には限界があるという面もあるが、「チャットがなくなれば、こうした犯罪がなくなるわけではない」(許氏)という意見もあるためだという。

 韓国では既に、“当たり前のもの”になったビデオチャット。その盛り上がりぶりと、そのサービスに対する社会的な距離の取り方、どちらも併せて参考にしたい。

ビデオチャットで、ヘコむ許氏

 韓国では、かなりの低年齢ユーザーもビデオチャットに登場する。許氏自身、「小学生の失恋話をえんえんと聞かされた……」ような経験もあるという。

 こうした中、「あまり年長者がビデオチャットをやると、傷ついてしまう」という現象も発生するようになった。韓国は知ってのとおり、目上の人間に対する礼儀を重視する国。ところが、オンラインコミュニケーションとなると、これがおろそかにされがちなのだという。

許氏 「あのー、私は27歳なんですけど、あなたは何歳ですか……」
相手 「14だよ! なんで?」
許氏 「あっ、いや、なんでもないです……」

 ことほどさように、オンラインコミュニケーションは奥が深い。

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[杉浦正武,ITmedia]



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