リビング+:レビュー 2003/08/11 22:10:00 更新

レビュー:バーテックスリンク「MediaWiz」
AV機器としては荒削り、だが軽快さと便利さが嬉しい「MediaWiz」

バーテックスリンクの「MediaWiz」は、各社が次世代のAV家電環境として注目しているホームネットワーク市場を狙った製品だ。しかし、大メーカーの製品とは大きく異なるのは、次世代ホームネットワークに向けた“枠組み”にとらわれていないこと。AV機器として見れば不満点は多いのだが、DivXをネットワーク経由で再生できるのは便利だ

 PCで管理するメディアをTVで楽しむ。バーテックスリンクの「MediaWiz」は、各社が次世代のAV家電環境として注目しているホームネットワーク市場を狙った製品である。製品のタイプとしては、ソニーが発売している「RoomLonk」、あるいはマイクロソフトが年末に発表すると見られている「Windows Media Terminal」と同種の製品といえる。

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PCのHDDにある動画や画像などのデータをネットワーク経由でTVに出力できるマルチメディアプレーヤー「MediaWiz」(メディアウィズ)。価格はオープンだが、同社の直販サイト「イチオシドットコム」では2万2800円で販売中

 しかし、大メーカーやマイクロソフトが計画するそれらの製品とは大きく異なる点もある。それは、次世代のホームネットワークに向けた枠組みにとらわれていないことだ。MediaWizは、ごく普通のWindows PCをサーバとして利用し、再生可能なメディアの種類もインターネットでデファクトスタンダードになっているものをサポートする。そこには「各社の思惑」など存在しない。製品としては不完全な側面も見せるMediaWizだが、そのコンセプトには各ベンダーの戦略を狂わせる潜在的な力がある。

特定の枠組みに依存しない自由さが魅力

 MediaWizはネットワークを通じ、PCのハードディスクに収められたビデオ、音楽、写真を再生、さらにおまけとして簡単なWebブラウザ機能も備えた端末だ。冒頭でも述べたように、この手の端末としては(TV視聴機能があり、Webブラウザ機能はないという違いはあるが)ソニーのRoomLinkがあるが、MediaWizはRoomLinkのように特定の枠組みに依存しない。

 たとえばRoomLinkの場合、ネットワークを通じたTV視聴、ビデオ再生の機能は、バイオシリーズの「GigaPocket」に依存しており、音楽ライブラリも「SonicStage」と連動。音楽コーデックはATRAC3、ATRAC3plus、MP3のみ。互換性対策にMP3はサポートしているものの、バイオのための周辺機器という側面はぬぐえない。これはマイクロソフトのWindows Media Terminalでも同様だろう。

 マイクロソフトは、Windows Mediaを全面に押し出した形で、今年末の「Windows XP Media Center Edition」やWindows Media Terminal、それを取り巻くアプリケーションの枠組みを打ち出してくるはずだ(記事参照)。関係各社は、ホームネットワーク上で各デバイスが通信するための仕様を統一しようとしているが、どのようなコーデックをサポートするのか、著作権管理の仕組みはどうするのかなど、まだまだ不透明な部分がある。

 現在はホームネットワーク上で、シームレスに各社の製品がつながるよう、最低限の取り決めを作っている段階。が、そのことがユーザーに対して、少々狭苦しい印象を与えているように思う。

 極論をいえば、エンドユーザーにとってどのような枠組みに収斂するか、あるいはどんなコーデックを用いるかなどは、どちらでもいいことである。もちろん、将来どのようになっていくのか、そのための標準作りは重要だ。しかしその一方で、今手元にあるメディアを自由に再生できることも重要な要素だろう。

 前振りが長くなったが、MediaWizの魅力はホームネットワークの標準争いとは全く無関係に、現在、PC上で標準的に使われているデジタルメディアを広くサポートしている点である。

 まず動画コーデックは、MPEG1、MPEG2はもちろん、MPEG4、そしてその派生コーデックであるDivXやオープンソース版DviXのXvidにも対応している。ご存じのように、現在、インターネット上では多くのDivX映像が流通しており、DVDリッピングソフトの多くはDVDソフトのDivXへの変換機能をサポートしているため、コーデックとしての優秀性はもちろん、データを作りやすいという優位点がある。

 ただ、DivXでエンコードされ、インターネットで流れている映像の多くは、DVDから違法にリッピングされたもの。DivXが大手ベンダーに採用されない背景には、そうした事情があると考えられるが、DivX自体は単なる圧縮コーデックであり、違法コピーとは何ら関係がない。たとえば、DivXと似た性能を持つWindows Media Videoで圧縮しても同じことなのだから。

 しかし、MediaWizの動画共有機能が「映画」と名付けられているのは、いかがなものだろう。少々あからさまな印象を受けるのだが……(編集部注:恐らく、海外でローカライズされたため、単純に「Movie」→「映画」になったと思われる。同様に「任意再生」という項目があり、これは“ランダム再生”のことらしい)。

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メニュー画面

 音声コーデックにも触れておこう。MPEG1 AudioLayer I、II、III(いわゆるMP3)、ドルビーAC3すべてに対応。オープンソースの圧縮コーデックであるOggVorvisにも対応する。加えてスペックには記載されていないものの、Windows Media Audio(WMA)の再生も行えた。画像再生もJPEG、Bitmap、GIF、Animated GIF、PNGに対応しており不足はない。

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音楽再生中はファイル名と簡単な背景が表示される

サーバ側の設定は至極簡単

 サーバ側の設定は至極簡単だ。もともと、何らかの標準プロトコルに対応しているわけではないため、専用のサーバプログラム「MediaWiz Server」をインストールし、動画、音楽、画像がそれぞれ保存されているディレクトリを指定するだけ。あとはMediaWiz Serverが自動的にメディアファイルをリストアップし、カタログを作成。MediaWizとの通信を行う。

 画像に関しては、MediaWiz ServerでサムネイルとTV表示用に最適化したファイルをあらかじめ作成しておくため、サムネイル表示も高速で、必要以上に高画素の画像ファイルも、ストレスなく再生させることが可能だ。また、画像ファイルや画像を収めたフォルダにプレイリストを割り当てておけば、画像再生中にBGMを流すこともできる。なお、動画や音楽をフォルダ単位で整理しておけば、MediaWiz上でも同じディレクトリ構造で表示される。

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写真のサムネイルはPC側であらかじめ作成しておくため、表示は高速

 複数のPCにMediaWiz Serverをインストールしておけば、MediaWiz側でサーバを任意に切り替えることも可能だ。PC上で複雑なネットワーク周りの設定は行う必要がなくシンプルで軽いサーバだが、ちょっとした問題もある。共有できるフォルダが、各メディアごとに1つずつという点だ。

 たとえばDviXファイルを保存しておくフォルダと、TVチューナーカードの録画フォルダを別々の場所に設定しておきたい場合、その両方を登録することができないのだ。これは少々不便。運用で回避できないことはないが、DivXファイルと録画ファイルを、別々のハードディスクに保存したい場合などを考えると少々不便だ。改善を望みたい部分である。

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インターネットラジオへのアクセス機能もある。知名度の高い海外インターネットラジオ局は、ほとんどプリセットされていた

豊富な出力端子

 幅257ミリ、奥行き175ミリ、高さ38ミリと、大きめの書籍程度のコンパクトな筐体を持つ本機には、一切の操作ボタンが割り当てられていないが、出力端子は非常に豊富だ。コンポジットビデオ、S1ビデオはもちろん、HDTVにも対応するコンポーネントビデオとDVIの出力も持つ。DVIからの変換コネクタさえ用意すればHDCPにも接続できるだろう。

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背面の端子。DVI、コンポーネント、Sビデオ、コンポジットビデオ、SPDIF(光、同軸)、アナログ音声、イーサネットが並ぶ(クリックで拡大)

 出力映像のフォーマットはNTSC、PALの両方に対応し、HDTVフォーマットとして480p、720p、1080iをサポートする。ただし高解像なビデオが再生できるわけではない。MediaWizの採用するビデオデコーダチップがHDTVフォーマットにスケーリングして出力するだけ。480pへの設定はビデオソースによっては意味があるものの、720p、1080iへの出力では解像度補完による表示となる。

 テストでは高精細な文字出力を期待し、東芝製のD4端子対応モニタに720pで出力してみたが、480p時よりも若干、ジャギーの少なさを感じるものの、表示品質はほとんど変わらなかった。また1080iに設定すると、インターレス表示のため文字が見にくくなる。D3までのTVの場合は480p、D4対応のTVでは720pを選択するといいだろう(ただし一部TVでは720pを1080iに変換して表示するものもあるので、その場合は480pに設定するのが望ましい)。

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Webアクセス機能は色数も解像度も少なめで情報量の多いページを読むのは少々厳しい

 音声は一般的なRCA端子によるアナログ出力、同じくRCA端子からの同軸S/PDIFデジタル出力、TOS-Link端子からのS/PDIF光デジタル出力を装備。アナログ音声出力は低域が膨らんだ印象だが、こうした低価格のPC関連機器にありがちなS/Nの悪さや明らかな音質低下は感じられない。できればデジタル出力端子からの音声を再生したいところだが、アナログ音声でも十分に音楽を楽しめるはずだ。

 このほか、ネットワークインタフェースとして100Mbps対応のイーサネット端子が装備されるほか、PCカードスロットがあり、IEEE 802.11b対応の無線LANカードを装着できる(あくまでクライアントとして接続できるだけで、アクセスポイントになるわけではない)。利用可能な無線LANカードは一部のものに限られるが、バーテックスリンクのホームページで機種名が随時掲載されている。ただし、無線LANで接続する場合は、高ビットレートのMPEG2などは帯域の問題から正常な再生が行えない。よほど配線に無理がある場合以外は、有線での接続を検討するべきだろう。

AV機器として改善の余地あり、しかし軽快さと便利さが嬉しい

 ここまでに紹介してきたように、MediaWizはなかなか魅力的なスペックを持った製品だ。PCの巨大なストレージエリアに、手持ちの映画や音楽を詰め込んでおけば、あとはリモコンだけで楽しむことができる。この手軽さがなんともうれしい。またPCのTVチューナーを使っているユーザーは、PCが置かれていないリビングルームで、録画した番組をネットワーク経由で楽しめる。

 ただし、いくつかの問題も残っている。

 まず画質。価格の安さを考えれば無理もないが、最新のプログレッシブDVDプレーヤーのような画質を期待すると裏切られることになるだろう。全く同じMPEG2映像をDVDに焼き込んでDVDプレーヤーで再生した場合と、MediaWizで再生させた場合で比較すると、明らかに前者の方が高画質に見える(DVDプレーヤーにはマランツ「DV8300」を使用)。

 また互換性も気になる。DviXとXvidに関してはオプション設定さえ間違えなければ再生できないといったことはなかったが、NECの「SmartVision」でハードウェアエンコードしたMPEG2ファイルは再生できなかった(.m2pファイルから.mpgに変換すれば可)。検証した範囲では、「TMPGEnc」でエンコードしたものや、カノープス「MTV1000」でエンコードした番組の再生は可能だったが、SmartVision以外にも再生できないケースはあるかもしれない。

 また動画・音楽ともに、操作画面中に表示されるのはファイル名のみ。MP3ファイルのID3タグも操作画面に反映されない。特に困るのはテレビ録画の映像で、ファイル名に番組内容を自動的に付与するものならば問題ないが、ファイル名に独自の管理コードを利用している場合などは、どのファイルが目的の番組を録画したものなのかを判別できないのだ。

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音楽ライブラリはフォルダ名、ファイル名で管理。タグ情報は反映されない

 MediaWizとの互換性があるMPEG2ファイルを生成し、なおかつファイル名に番組内容を付与するテレビチューナーであれば、前述したように録画した番組をシームレスにリビングのTVで楽しめるが、たぶんにユーザーの環境や運用に依存してしまう。MediaWizは、あらかじめPCに蓄積してある映像、音楽のコンテンツをネットワーク経由で再生する装置であり、特定の機能とは連動しないと割り切って使う必要があるだろう。

 また操作性の面でも、一番遅い早送りでもかなり早回しになったり、最初の早送り時に早送り用のインデックスを作成(2時間ほどのファイルで30秒ほど)したり、映像や音楽の再生をいったん止めなければ別の機能を呼び出せないといった点も気になった。たとえば、見ている映画を途中でポーズさせたままWebブラウザ機能に移行し、またポーズしたところから映画を見るといった使い方はできない。

 付属するリモコンも、カード型の簡易なもので、なおかつすべてのボタンが同じ形になっているため、画面を見ながら手探りで操作しにくく、また赤外線出力が弱いと感じた。本体側の赤外線受信部も受信角度が狭く、正面に近い場所から操作した場合でも上下の位置関係によっては反応しないことが多々あった。

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カート型のリモコン

 つまり、一般的なAV機器としてのクオリティをMediaWizに求めてしまうと、あまり魅力的な製品には見えてこないのだ。本機のキモはAV家電的な完成度の高さではなく、DivXをネットワーク経由で再生できること1点に絞られている。ただ、その1点こそが重要と思うならば、魅力的な一品であることは間違いない。DivXで圧縮した動画を再生可能なDVDプレーヤーもあるが、本機ならCD-RやDVD-Rなどに焼かなくとも、PC上のDivXを再生できるのだから。

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[本田雅一,ITmedia]



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