リビング+:特集 2003/10/24 21:58:00 更新

特集:秋の夜長はイーブックで過ごす
電子書籍のキーマンが語る、今後の構想

最終回は、イーブック業界のキーマンこと、イーブックイニシアティブジャパンの鈴木雄介社長にインタビューを行う。デバイスの話題から、市場規模の予測まで、広範に聞いた。

 イーブックコンテンツを扱う「10daysbook」は、月間2万ダウンロードを売り上げ、業界第2位につけている。それを運営する、イーブックイニシアティブジャパンの鈴木雄介社長は、電子書籍ビジネスコンソーシアムの発起人も務める、業界のキーマンだ。

 イーブックビジネスの現状を多角的に紹介する「特集:秋の夜長はイーブックで過ごす」、最終回は鈴木氏にインタビューを行う。デバイスの話題から、市場規模の予測まで、広範に聞いた。

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イーブックイニシアティブジャパンの鈴木雄介社長

ZDNet まずは、業界の盛り上がりについてうかがいます。いかがですか。

鈴木 電子書籍ビジネスコンソーシアムの設立発表もあったが(記事参照)、業界として、反応はいい。これまでのようにWebブラウザで見るのでは、(本を)握ったかんじがしなかった。読書専用端末が登場すれば、手に持つことでリアリティがはっきりする。

 いま、出版業界全体の景気がよくないため、次の手は何かと探してきた。その選択肢の1つが、リアルになった。

ZDNet ――専用端末の登場が、大きいと。

鈴木 やはり、PCを机の上に置いてみるのでは、目との距離が調整しにくい。目の疲れにつながり、長時間視聴しにくい。

 PDAもあるが、あれは手帳が発達したかたち。どうしてもポケットの大きさになっている。本のためには、あの大きさは適していないのではないか。ましてや、携帯電話はあの小ささでどれほど読めるのか。

 いま、新刊の本は四六版で出ている。あれが一番読みやすいというのが、市場の答え。専用機では、新刊のサイズを目指してほしいとメーカー側にお願いしてきた。

ZDNet そうなると、市場規模も変わってきますか? 現在は、10億円の小さな市場ですが。

鈴木 たしかに、「何年後にはいくらの市場になる」とか言われているが、そういうことを考えすぎ。現在、紙の出版市場は2兆2000億円と言われているが、私はこの5%程度までしかとれないと考えている。やはり、電子書籍は“隙間産業”だ。足元を間違ってはいけない。

 ただし、5%というのはそれなりの市場でもある。著作権者に、参入しましょうと説得するには十分だろう(記事参照)。

 大事なのは、紙とは違うということ。もちろん、“紙”に問題があるわけではない。紙には不満がない。ただ、出版が売れていない理由は、新聞に広告をうって本屋に買いにこい、という姿勢にある。僕らは「サービスそのものを売ろう」ということ。本が恒常的に、いつでもどこでもある状態を作りたい。

ZDNet 紙の書籍との差別化について、より具体的にお願いします。

鈴木 たとえば、石川県では図書館を、電子図書館に置き換えて「本のない図書館」の提案を始めている。また、ホテルに20インチの液晶を備え付けてイーブックを提供し、お金はフロントで受け取るという取り組みもある。

 ガストに備え付けられた端末で、食事をしながらマンガを読めるというサービスもある。ユーザーは続きを読みたくなり、またガストに来るとなれば、店の売上にもつながるだろう。ほかに、病院で入院患者に向けてイーブックを提供するのもいい。

ZDNet イーブックは国際展開も考えているようです。さまざまな可能性が、広がりますか。

鈴木 国際展開はまだ具体化していないが、関係者から「ぜひやろう」というお声がけをもらっている。(出版物の少ない)“弱小言語”の民族は、いまや文字を失おうとしている。全て、アルファベットに置き換えてしまう、という流れになっている。ΣBookなら、ボロボロの書籍でも一冊あれば、これをスキャンしてアーカイブできる。

 電子書籍では、変にお金を稼ごうとか、ケチなことを考えないことだ。文化的視点を持つべきだと、ご指摘をもらっている。

 私も、この事業に取り組んで、ああだこうだ考えたが、これだけの支援者が出てくるとは思わなかった。これだけの人が集まって、やろうという強い思いを持っている。

 一人の智恵など、しょせん大したことはない。自分の考えていたより、何倍も大きな構想の中で考えていれば、電子書籍はけしてだめになったりしない。また、それだけの素地もあるものと思っている。

(文中敬称略)

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[杉浦正武,ITmedia]



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