Networld + Interop 2001 Tokyo 基調講演:「家庭からのインターネットアクセスはワイヤレスイーサネットで」とインテルのマローニ主席副社長

【国内記事】 2001.06.07

「Networld + Interop 2001 Tokyo」ショウ2日目の6月7日,米インテルの主席副社長兼コミュニケーションズ事業本部長を務めるショーン・マローニ氏が基調講演に登場した。多くの時間を,デモや技術を持つ企業の紹介に割くというインテル独特の講演スタイルで,会場を埋め尽くした聴衆を飽きさせず,IPが実現する次世代ネットワークを夢のある存在と印象付けた。

壇上を駆け回って講演するマローニ氏

 マローニ氏は,いまだに株価が低迷している現状を,1987年10月の急激な株価下落になぞらえ,「当時,たった2日間で約2年間の上昇分が失われる惨状を見せた株価だが,現在のナスダック株価水準は,約1年の上昇分をチャラにしてしまった程度」と言う。

 完膚なきまでに叩きのめされたドットコム企業だけでなく,ネットワーク機器ベンダーの株価も低迷している。これに対してマローニ氏は,インターネットのトラフィックが飛躍的に増大するという調査結果を証拠に,ネットワーク業界の未来は明るいと予測する。

「機器販売のスローダウンは,企業が過剰に購買したため。飲みすぎて酔い潰れたようなものだ。株価や販売実績がスローダウンしても,技術は発展を続ける。酔いが覚めたら,また買ってくれるはず」(同氏)

 マローニ氏は,2001年後半にはアジア太平洋地域から発生するインターネットトラフィックが米国を超えるという調査結果を引き合いに,日本が原動力となってアジアのインターネットを牽引してほしいと呼びかけた。

iPaqでIEEE802.11をアピール

 今回の基調講演には,コンパックコンピュータの「iPaq」が頻繁に登場。まず行われたデモでは,情報と画像をどちらも表示できるビデオオンデマンドの優位性がアピールされたあと,iPaqでインテル製ワイヤレスLANカードを通してPCからデータを取り込んだり,PCで見ていた映像を,同じようにiPaqでも見れることが示された。

 また,マローニ氏に紹介されて壇上に上がったビートニックのCEO,トーマス・ドルビー氏も,iPaqを使ってパフォーマンスしてくれた。

 このドルビー氏,現在は同社のCEOを務めているものの,音楽業界に20年間身を置いており,坂本龍一と共同作曲したり,音楽ビデオのプロデューサーを務めたこともあるという経験の持ち主。米国ではデビッド・ボウイやスティービー・ワンダーと仕事をしたこともあるという。

 ビートニックは,ドルビー氏が設立した会社らしく,「音楽スタジオをオフィス,ラップトップ,そしてPDAに持ち込む」ソフトウェアを開発している。ダウンロードすると手に入れられるこのソフトウェアを利用すると,曲を楽器ごとに分解したり,作曲したりできるという。

 デモでは,iPaqで再生したグリトニー・スピアーズの曲からベースの音だけを拾ったり,音声だけにしてみせてくれたあと,最後に音声だけを省いてドルビー氏が歌うパフォーマンスを見せてくれた。ここでも,IEEE802.11b準拠のワイヤレスLANでPCからデータをダウンロードしたことが,さりげなく紹介されていた。

 ブロードバンドインターネット時代になると,家庭にまで広帯域な回線が引き込まれることになる。マローニ氏によると,日本が世界に誇る取り組みは,家庭に光ファイバーを引き込むFTTHへの取り組みという。

 そしてマローニ氏は,家庭内におけるネットワークアクセスでIEEE802.11規格のワイヤレスイーサネットが主流になるという。この規格には,既に商用化されているIEEE802.11bと,より高速なIEEE802.11aの2つの仕様があり,家庭内にLANケーブルを張り巡らす必要がないので現実的だ。

IPベースで統合

 マローニ氏は,公衆網で伝送される音声やデータ,そして無線など,あらゆるネットワークがIPで統合される将来像を描く。今後5〜10年の移行期を経て,IPをベースとして統合されたネットワークに必要なものが3つあるという。

「ネットワークそのものがインテリジェントであることと,低電力で高集積,高性能のきょう体,そしてイーサネットだ」(同氏)

 インテルでは,これらを提供するために,インテリジェントなネットワークプロセッサを開発しているほか,電力消費を60%削減し,集積度を150%以上高めたネットワーク機器を2002年に市場投入するための研究開発を続けているという。

 そして最後はいつものパターンで,インテルの多大な研究開発投資を披露してくれた。

「われわれは,75億ドルの設備投資を行い,42億ドルを研究開発につぎこんでいる。この内,コミュニケーション分野には12億ドルを投入する」(同氏)

関連リンク

▼インテル

▼ビートニック

▼N+I Tokyoの公式Webサイト

[井津元由比古 ,ITmedia]