e-Day:弥勒菩薩が由来

【国内記事】 2001.06.26

 ミロク情報システム(MJS)が,「ACELINK WORLD」と呼ばれる構想を発表した。申し訳ないが,最近の若い記者には知られていない同社が,ASPサービスまで視野に入れた新しい会計事務所向けソリューションをぶち上げたのだ。

 ミロク経理の会計事務所事業部が分離独立する形で1977年設立された同社は,もう四半世紀近い歴史がある。ちなみに社名のミロクは「世直し仏」として知られる弥勒菩薩(みろくぼさつ)を由来とする。

 当初は計算センターで会計処理を受託する形態だったが,1980年に会計事務所向けのオフコン「ミロクエース・モデル100」を投入し,これが爆発的に売れた。

 伝票をスピーディーに入力するために,キーボードも勘定科目ごとの専用キーがある特殊なものだった。キーの数には限りがあるので,キーボードの上にプレートを何枚も重ねられており,これをパタパタとめくりながら入力するという仕掛けだったと思う。こうしたインタフェースは特殊なものでもなく,JRのみどりの窓口なんかでつい最近まで使われていたりした。

 創業以来同社を率いてきた是枝伸彦社長は,「顧問先企業向けオフコンの投入や最近ではWindows NT版の投入もあったが,基本的にはミロクエース・モデル100の延長戦上にあった」と振り返る。

 しかし,今回発表されたACELINK WORLD構想は,従来の会計業務や税務業務を超えた,新しい会計事務所のあり方を探る戦略的なものとなっている。

 きっかけは,「税理士法改正」や2003年からスタートする「電子申告」だ。5月下旬に衆議院で可決されたばかりの改正案は,宣伝解禁,料金自由化,記帳代行独占の撤廃,税理士法人制度の創設などが盛り込まれ,政府の規制緩和の方針に沿って,税理士業務の自由化を狙ったものだという。

 こうした規制緩和は自由競争時代へ入ることを意味し,単なる記帳代行では価格破壊が進み,法人化によってコンサルティングのようなサービスも高度化するとみられている。同社専務の是枝周樹氏は,「低料金で記帳代行する価格破壊型とコンサルティングなど高度なサービスを提供する経営戦略構築型に会計事務所は2極化していく」と話す。

 ACELINK WORLDをぶち上げる背景には,もうひとつの競争がある。それは,数年前から始まった会計や税務のソフトウェア自体の競争激化だ。

 もともと,会計事務所という市場には専用機を販売するTKC,日本デジタル研究所,そしてMJSなど数社があり,パイを分け合っていた。しかし,顧問先企業へ食い込むためには標準的なプラットフォーム,つまりPCへの対応が避けられなかった。そこで1997年のTKCを皮切りに,相次いでWindows NTベースの製品を投入することになった。

 当然ながらこうした動きは,PC向けパッケージソフトウェアベンダーであるオービックビジネスコンサルタント(OBC)やピーシーエー(PCA)を刺激した。さらに個人事業主や小規模な事業所向けのPCパッケージソフトウェアとしては,ここ数年快調に飛ばすインテュイットの弥生会計がOBCやPCAにプレッシャーをかけている。弥生会計は,4万円という低価格で,業務パッケージソフトとしては昨年も売り上げナンバーワンを誇るのだ。

 MJSの是枝伸彦社長は,「小規模向け業務パッケージのほとんどは使われないまま埃をかぶっている。マニュアルと首っ引きの操作ではダメ。会計事務所のサポートがあるわれわれのソフトはすべて稼動している」と話し,フィールドの違いを強調するが,MJSにも顧客税理士のコンピュータリテラシーをどのように高めるかという問題もある。

 同社によると,顧客である約8000の税理士の平均年令はなんと65才近いという。彼らにとって専用機はとても扱いやすかったのだろうが,インターネットによるASP事業への展開となるとハードルはかなり高い。

[浅井英二 ,ITmedia]