e-Day:17才のベンチャー創業者

【国内記事】 2001.06.27

「世界初! プラグインなしでWeb 3D」

 何とも勇ましいキャッチフレーズで製品発表をぶち上げたのは,設立からわずか半年というベンチャー企業のヤッパ・テクノロジーだ。

 この業界で長く仕事をしていると,この「世界初」というくらい怪しいものはないと思うようになる。オマケに記者発表会が行われたのが,東京・西麻布の交差点から外苑西通りを広尾方面に向かう途中にある香港ガーデンだった。ニュースチームのN編集者は,記者発表会が終わっても「謎の香港系企業」と勘違いをしている始末だ。

 何のことはない。ヤッパのオフィスがたまたま香港ガーデンのお隣りだったというだけで,香港系企業らしいというのも根拠のないガセネタと分かった。

 それでも記者発表会のあと,社長を務める伊藤正裕さんにいろいろ話を聞いてみると別の面白いことが分かった。

 先ず社名だ。香港系企業らしいという段階では「ヤッパ」というのはてっきり中国語か何かと勝手に納得していたが,そうではないとなると由来が気になる。

「ヤッパですか? やっぱりのヤッパです」

「……」

 そ,そうかぁ……。Yahoo!(ヤッホー)なんてのもあるんだから,こういうのもありだと思う。

 私はいつもベンチャー企業の創業者にはバックグラウンドを聞くことにしている。人にはいろいろな歴史があって面白いからだ。

「バックグラウンドですか? この6月にインターナショナルハイスクールを卒業したばかりの17才です」

「……」

 もう絶句だ。いろいろ取材もしたが,こんなのは初めて。

イスラエル企業と提携

 社名の由来と社長のプロフィールはこのへんにしておいて,彼らが発表した技術やサービスを紹介しよう。

 Web上でインタラクティブな3Dコンテントを再生しようとすると,アップルのQuickTimeやマクロメディアのShockwaveなどでは,Webブラウザ用のプラグインモジュールが必要となる。プラグインは,必要なときにダウンロードされ,PCに慣れているユーザーであれば,それほど意識することはないのだが,初心者にとってはやはり厄介だろう。そうでなくとも,閲覧しようとしたらプラグインのダウンロードを促され,そのままあきらめてしまうことは多い。

 ヤッパでは,3Dコンテントを特別なプラグインなしで再生できるように制作することで,こうしたハードルをなくしてしまおうとしている。

 伊藤さんは「e-コマースなどでは3Dコンテントの訴求力が期待されているが,オブジェクトが埋め込まれたページを訪れても,実際にはそれを再生・閲覧してくれるのは2割にすぎない」と話す。

 ヤッパは,イスラエルのモンフォートが独自に開発したJava用の3Dグラフィック技術「3Di」を利用し,どこでもどんなデバイスでも閲覧できる3Dコンテントを格安で制作する事業をスタートさせた。Webサイトで販売したい商品をヤッパに持ち込めば,1個当たり2万4000円から3D化してくれるというものだ。これまでにも技術はあったが,なかなか普及に至らなかったWeb 3Dだが,制作コストを大幅に引き下げることで普及を狙う。

 当面,オーサリングツールを販売する計画はなく,制作の自動化やアウトソーシングなどで制作キャパシティの拡大を図りたいとしている。

 たいていの3Dオブジェクトのサイズは50Kバイト程度に収まり,これにJava用の3Dグラフィックエンジンを足しても約100Kバイトとそれほど容量もない。これならISDNのダイヤルアップでもいい。

 3Dオブジェクトは,クルクルと回転させたり,拡大させたり,いろいろとインタラクティブな操作もできる。ヤッパでは,e-コマースで手に取る感覚を演出できるほか,これまでよりも訴求力の高いバナー広告や電子メール広告が実現できるという。

 Javaの採用が進む携帯電話への取り組みが未知数で,「話があれば対応したい」とするだけだが,異色の17才社長の手腕が楽しみだ。

[浅井英二 ,ITmedia]