オラクルの「最後のデータベース」がそんなに良いものなら……

【国内記事】 2001.07.02

 オラクルのラリー・エリソンは,Oracle9iを「最後のデータベース」というコードネームで呼んでいたが,私はそれを,データベース市場は既に死んだのだとエリソンが考えているのだと解釈していた。

 だが,その後彼が明らかにした発言の真意は,それとは違っていた。彼によれば,それは「最後の」データベースという意味ではなく,Oracle9iは,データベースコンピューティングにリレーショナルデータベースが登場して以来,最も大規模で,これまでの常識を根底から覆すような抜本的な技術的向上が盛り込まれた製品だという意味であった。

 この市場において今後これほど素晴らしい技術革新が成し遂げられることはあり得ないだろうというのが,彼の「最後の = 決定版」という言葉に込められた真意であったのだ。それを聞いて私は,エリソンがまだ負けん気を捨ててはいないことを知り嬉しく思った。

 6月中旬に行われたOracle9iの発売記念会の席上でも,エリソンの語気は荒かった。彼は,マイクロソフトとIBMの競合2社について,オラクルに対して少なくとも5年の遅れをとっていて,そのために,彼らがOracle9iに匹敵する製品を作り出すことなど不可能とこきおろした。さらにエリソンは,IBMとマイクロソフトは今後,市場での存在価値を失っていくに違いないとまで言い放ったのだ。

 いいぞラリー,その調子だ!

 だが,そのときだ。私はふと,それではなぜ,オラクルは,Oracle9iの価格をOracle8iよりも30%程度も切り下げて,5年かかっても同じ土俵に立つことすらできないとされる競合製品と同水準の価格帯に持っていく必要があるのだろうと疑問に思った。それほどまでに素晴らしくて強力な製品ならば,価格切り下げなど必要ないのではなかろうか?

 オラクルは,既にここ数カ月にわたって,同社の価格設定に関して批判を浴びており,市場勢力にかげりが見え始めていることを認めている。オラクルがハードウェアの必要条件ではIBMのDB2と基本的には同程度にあるOracle8i製品シリーズで,市場シェアを後退させてきているということも注目すべき点だ。

 そしていま,状況はさらに少しづつ複雑化してきている。エリソンは,データベースのコストというのは,セットアップやデータベースマネジメントシステムを走らせる作業に関わるすべてのコストと比べれば,基本的には無視できるものだと指摘する。だが,それならばいっそう,なぜオラクルは,さらに高機能を実現できるはずの技術に対して価格の切り下げを行う必要があるのだろうか。しかも,Oracle9iは理論上,低コストのインテルボックスなどのような,かなり低価格帯に属するハードウェア上で動作するのだ。

 そこで考えられる理由とは,次の2つしかない。エリソンが,マイクロソフトとIBMを一刻も早く破滅へと追い込もうと願っているか,もしくは,価格の切り下げそのものが,見せかけに過ぎないか,そのどちらかだ。だが,エリソンがマイクロソフトとIBMのソフトウェア部門など消え失せてしまえばいいと願うのと同じくらいはっきりと,私は,そのような願いが現時点では全く非現実的なものだということを知っている。ということは,オラクルの価格操作は,見せかけに過ぎないということだ。

 悪いことにOracle9iはキラー製品だ。どのような意味であるにしろ,それが最新のデータベースであることに間違いはないのだ。

[John Taschek ,ITmedia]