e-Day:中国式ネットカフェ

【国内記事】 2001.07.06

 新宿・歌舞伎町に店を構える中華系屋台料理店が,その階下にインターネットカフェをオープンさせた。隣町の大久保は,韓国からの留学生を中心に人気を集めるインターネットカフェが既にたくさんあるが,歌舞伎町では珍しいし,中国本土からの留学生をターゲットにしているのはなかなかない。

 7月7日から正式オープンする中国式ネットカフェ「888」(はちはちはち)の店名は,発展の「発」(fa)に通じる8(pa)という縁起のいい数字を3つ並べたもの。日本の「八」が「末広がり」というのと由来は違うが似ている。

 中華料理店とカラオケの複合店「東京中華娯楽城」の階下につくられているということもあり,大久保の韓国人向けネットカフェに比べると怪しい雰囲気だ。

 マネジャーを務める台湾出身の陳玉慶さんは,「ここは元々,ステージ付きのオープンなカラオケホールだった」と明かす。場所柄トラブルが絶えず,「それならいっそ,留学生の交流の場としても生かせるコミュニティー型のネットカフェにしようと考えた」というのも面白い。

 ネットカフェ「PC房」(ピーシーバン)の先進国,韓国では,ネット対戦ゲーム「Star Craft」(米ブリザード開発)が登場した3年ほど前からゲームセンター化が進んでいる。

「初めはネットカフェで対戦ゲームを楽しんでいたんだけど,家庭でも楽しめないか,とだれもが思い始めた」と,知人で韓国からの留学生は話す。このStar Craftの存在が韓国のブロードバンドインフラを整備したと言っていいくらいだという。

 家庭でもネット対戦ゲームを快適に楽しめるようになると,いきおい,ネットカフェは「交流の場」としての性格が強まった。だれか凄い腕前のヤツはいないかという期待感がプロのゲーマーを生み,彼らと対戦したいというプレーヤーがPC房に集まってくる。

「ソウルの街では10メートルごとにPC房があり,競争も激しい。料金も1時間50円程度と格安」と留学生。

 Star CraftやDiabloに刺激された韓国のクリエーターが1年ほど前に開発した「Lineage」(リニジ:“家系”の意)という対戦ゲームでは,PC房に入り浸りの若者が飲まず食わずで熱中し,死亡するプレーヤーまで出たという。

 ウソだろ,と信じがたい話だか,留学生の彼は大真面目だ。Lineageには,ゲームで使う武器を融通する機能が盛り込まれており,実際のウォンで売買されるというから驚くばかりだ。「武器欲しさに女子高生などが非行に走ったりして社会問題にもなった」という。こうなると行き過ぎだ。

 歌舞伎町にオープンした中国式ネットカフェは,そこまでは行っていないものの,40台ほど並んだPCではみんなゲームを楽しんでいた。しばらく試験的な営業を行っていたが,陳さんによると,「夕方あたりから留学生たちが集まり,週末は朝まで満席状態だ」という。「日本の方にとっても中国語を習う場になれば」と話す。

 テクニカルライターの河下光一さんは,「PCroom.org」というコミュニティー型ネットカフェを支援する組織を立ち上げおり,この888の開店にも協力している。

「ほかのアジア諸国では,ネットカフェがITリテラシーの底上げに貢献している。国内でも特に地方ではそうした役割が期待できるし,ニーズも高い」(河下さん)という。

[浅井英二 ,ITmedia]