NHKプロデューサー今井氏,「VHSの奇跡」からプロジェクト成功への道を語る

【国内記事】 2001.07.12

 日本ユニシスは7月12日,ES7000など同社のソリューションを紹介する「Unisys e-@ction Solutions Forum2001」を都内のホテルで行った。NHKのチーフプロデューサー今井彰氏やマッキンゼーの名和高司パートナーをゲストスピーカーに迎え,ブロードバンドなどを踏まえた上での日本産業の今後について示唆した。会場には,企業の管理者を中心に多数の参加者が集まった。

 同社の島田精一代表取締役は,ホストスピーチを行い,経済がグローバル化する中でのユキビタスなインターネット環境やブロードバンド時代の到来について触れた。また,日本ユニシスとしては,WindowsベースのES7000や,HPやサンなどのUNIXサーバ,SAN(Storage Area Network)やNAS(Netowork Attached Storage)などのストレージソリューションにも注力するとした。さらに,セキュリティやネットワークにも力を入れていくという。

 島田氏は終わりに,同社の顧客へのソリューション提供に関し,「eビジネスからEビジネスへ」というキャッチフレーズを紹介した。「E」は「いい(Good)」の意味で,顧客のビジネスを良くしていく気持ちを表しているとしている。

VHSの奇跡を紹介した「プロジェクトX」

 この日,ゲストスピーカーとして,NHKの番組制作局でチーフプロデュサーを務める今井彰氏が講演した。同士は,自らが手掛ける番組「プロジェクトX」の中から,2000年の3月に放送された「窓際族が世界規格を作った VHS・執念の逆転劇」を紹介し,それを基にプロジェクト成功する秘訣について話した。

ゲストスピーカーとして話した今井彰氏

 世界規格であるVHSは,日本ビクターのビデオ事業部長を務めていた高野鎮雄氏を中心に,「窓際技術者」の意地から生まれたという。

 高野氏は「VHSができれば,忙しい人も皆と同じ番組を見ることができる。家族の風景が変わる」という思いをひたすら持ち続け,あきらめなかったという。また,VHSプロジェクトを支えた経理担当者は,ビクター本社に2年間に渡ってニセの収支報告書を出したことも紹介された。さらに,高野氏は下請け工場を下請けではなく,「協力工場」と呼んだことで,そこの社員は大手の誘いも断って同プロジェクトで働いたという。

 今井氏はこのように,開発に夢中になり,思い続けたことがVHS成功の要因だとした。加えて,同氏のこれまでの経験から,成功者の共通項を拾い,プロジェクトが成功する秘訣を3つに分けて説明した。

 1つは,テーマを設定することの重要性。金儲けではなく,「社会的にどんな意味があるのか」を明確に設定することで,チームは迷うことなくそれに向かって突き進むことができるという。

 次に大事なのが,チームに集まった個性だという。価値観や分野,技量がそれぞれ異なる人が集まることで,新たな発想が生まれ,チームが輝きを放ち始めるとした。

 3つ目がリーダーの役割。今井氏は,好きなリーダーとして,瀬戸大橋を掛けた杉田秀夫氏を挙げた。杉田氏は,部下の話をとことん聞くのだという。そして,「男がほれる男」とさえいわれたとしている。

「窓際族が世界規格を作った」の放送修了後,反響となる番組あてのFAXや電子メールは1万を超えたという。

 今井氏のプレゼンテーションを聞いて,それがよく理解できた。感情にグイグイと訴えかけてくるし,聞いていて心地よい感覚になる。テレビプロデューサーらしく,大衆の気持ちをつかむのがうまい。

関連リンク

▼日本ユニシス

▼「窓際族が世界規格を作った」

▼「男たち不屈のドラマ 瀬戸大橋」

[怒賀新也 ,ITmedia]