キャッシュカードのICカード化に弾み,富士銀行などが試験運用を開始

【国内記事】 2001.09.05

 凸版印刷は9月4日,全国銀行協会(全銀協)のICキャッシュカード標準仕様,EMVに準拠したICカードを開発したことを発表した。全銀協による製品認定を受けた後,2002年4月に出荷を予定している。

 これまでキャッシュカードなどで利用されてきた磁気カードには,偽造が容易であること,個人情報の不正な読み出しが可能であることといった問題点があったが,ICカード化によってそれが困難になる。さらに,ICカード内に電子証明書を組み込むことで,取引時のセキュリティをいっそう高めることも可能だ。

 こうした理由から,今年以降本格的に,クレジットカードのICカードへの切り替えが始まっている。今回発表されたICカードは,来年以降進展すると見られるキャッシュカードのICカード化に備えて開発されたものだ。

 凸版印刷ではこのICカードに,キャッシュカード機能だけでなく,オンラインデビット機能や,銀行独自のアプリケーションを搭載できる「OBJECT DOWNROAD」機能を搭載している。たとえば利用金額や購買実績に応じて特典を与えるポイントサービスを組み込むことも可能だ。同社はさらに,既にICカード化が進んでいるクレジットカードとの一体化も進めており,2002年中に製品化する予定だ。

 一方,大日本印刷も,同じく全銀協のEMVに準拠したアプリケーション,「ICキャッシュアプリ」を開発した。これは,複数のアプリケーションを搭載可能なICカード用OS,「MULTOS」を採用しており,キャッシュでの決済とオンライン/オフラインデビット決済を自由に組み合わせて利用できる点が特徴だ。凸版印刷が発表したICカード同様,ポイントサービスや電子チケットなどの付加価値サービスを搭載することもできる。

 大日本印刷によれば,既に,みずほファイナンシャルグループの富士銀クレジットや第一勧銀カードが発行している「みずほICスパークカード」の試行運用における採用が決定している。これは,マスターカードのICクレジットカードアプリケーションも搭載した,クレジット/キャッシュ共用のICカードだ。

 大日本印刷は,今回発表したMULTOSベースのものに加え,今後JavaCard用やネイティブOSカード用のICキャッシュアプリも提供していく方針だ。

 同社はさらに,金融機関などで利用されるATM端末に内蔵し,ユーザー認証に利用する「SAM」(Secure Application Module)カードも発表している。

 これと歩調を合わせて沖電気工業では,ATM端末「ATM21Bシリーズ」にEMV準拠のICキャッシュカード機能を搭載し,8月末より顧客への納入を開始したことを明らかにしている。これは上記のSAMカードを標準で搭載しており,ICキャッシュカードのオフライン認証を行えるほか,ポイントサービスなどにも対応できる。

 なお,このATMを導入した富士銀行では,キャッシュカード機能および振り込みカード機能を搭載し,運用を行っている。

関連リンク

▼凸版印刷

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