経済産業省のトップダウンは大丈夫?
【国内記事】 | 2001.09.11 |
9月11日,JUAS(日本情報システム・ユーザー会)が主催する「ITガバナンス21」フォーラムのビジネストラックに経済産業省の商務情報政策局で情報プロジェクト室長を務める長谷川英一氏が登場し,「e-Governmentの展望」と題された講演で,政府が進めるe-Japan戦略を解説した。
2001年1月22日にIT戦略本部は,5年以内に世界最先端のIT国家になるための「e-Japan戦略」を決定した。その後,さまざまな目標が定められた。IT業界では「2003年度までにすべての申請・届出手続きをオンライン化する」という計画にビジネスチャンスを見出そうと色めき立っている。
これに関しては,もう書き尽くされているので,今回の講演で新鮮だった話を挙げていこう。
届出・申請手続きを電子化するために法律を約500本,手直しする必要が出てくるという。これは,法律の中で電子申請を認めない記述(用紙により……など)が散見されるためで,この修正に時間がかかるらしい。さすがに役所はスピードが遅い。
長谷川氏は,ここでウルトラCの法律を作る可能性を検討していると明かした。それは,たった一条,「すべての申請・届出は電子的に行える」という法律を作るというものだ。現在,こちらを強く進めているという。これですんなり通るのなら,500本の書き換え手続きなどに時間をかける必要などないと思うのだが,役所の感覚は,やっぱり庶民には分からないようだ。
もうひとつ新鮮だったのは,年度別電子化アクションプランを前倒しして実行する計画だ。長谷川氏によると,6月に決められたプランでは遅いと自民党からケツを叩かれて,前倒しする方向になったという。
そしてこの講演で最も目立ったは,長谷川氏がトップである経済産業大臣,平沼赳夫氏をどう扱っているかだ。
電子公文書発行システムのテストに平沼氏が立ち合ったエピソードを披露したときに同氏は,「平沼大臣に初めて電子署名させて……いや,してもらって……いや,そうでもない。“して頂いて”ですか(笑)」と振り返る。
この電子公文書発行テストは,うまくいったという。ただし,パスワードを入れたのは平沼氏ではなかった。
「パスワードは16ケタ。さすがに大臣が覚えるのはムリだろう。ということで,隣にいる人が入力したのですが」(長谷川氏)
官僚が,国民から白眼視されるのは,決してやっかみではない。そのエリート面が,鼻につくのだ。今日,よく分かった。
それにしてもトップダウンが確立されていないこの現状で,e-Japanは実を結ぶのだろうか? 不安だ。
[井津元由比古 ,ITmedia]