帯域を有効に使い切る:ルートサイエンスやファットパイプが製品を紹介

【海外記事】 2001.09.14

 通信のアベイラビリティを確保し,帯域を有効に活用することは常に重要なテーマである。N+I Atlantaの会場では,マルチレイヤスイッチや負荷分散装置,帯域制御装置を数多く見掛けるが,基本的にそれらの目指すところは同じだ。

 中には,ちょっと違ったアプローチを試みる製品もある。米ルートサイエンスは,高いレイヤでのトラフィックコントロールの代わりにルーティングに注目し,最適な経路を見付けることで帯域を有効に活用する「PathContorol」を紹介している。

 PathControlは,複数のISPと接続しているマルチホーミング環境を前提とした製品だ。ゲートウェイに位置する複数のルータをBPGピアリングを通じてコントロールし,最も早いレスポンスを返す経路を選択する。したがって各ルータがBGPに対応している必要がある。

ルートサイエンスの「PathControl」。まだ開発中の試作品だ

 筐体にはパフォーマンス計測のためのモジュールが組み込まれる。サーバに対するリクエストが発生すると,このモジュールが小さなGIFファイルを送り出し,パフォーマンスを計測する。PathControlは,その結果に基づいて決定した最適経路をルータに知らせ,ルータはそれに沿ってアウトバンド通信を処理するという仕組みだ。

 接続しているISPの帯域に加え,宛先IPアドレスまでのネットワークの混雑具合に応じて経路を選択するため,体感速度は5割から8割増しに向上するという。これはまた,接続ISPごとのトラフィック分散にもつながる。

 同社によれば,PathControlは米国では10月に出荷されるという。価格はモジュールの構成によって異なり,2つのISPに接続する最小構成で14万ドルから。同社では,大規模企業やISP,データセンターなどを対象に販売していく方針だが,日本での販売計画は未定である。

 マルチホーミング環境でトラフィック分散を行うという意味では,米ファットパイプも同様の製品群を提供している。同社の「FatPipe WARP」は,異なるISPに接続されたルータ間でトラフィックの負荷分散を行う製品だ。同社はこれを「ルータクラスタリング」と表現している。

 FatPipe WARPは,負荷分散とルータの冗長化を同時に実現する製品だ。接続している回線のどれかに帯域の余裕があればそちらにトラフィックを振り分けたり,逆にどれか回線に障害が起きれば,その分のトラフィックを他の接続に回すといった処理を行う。T1/T3など複数の回線を集約して,最大で合計135Mbpsまでをサポートできる。

 PathControlがGIFファイルによるパフォーマンス計測とBGPを利用して経路を決定しているのに対し,FatPipe WARPは「RAIL」(Redundant Array of「Independent Lines)と「SmartDNS」と呼ばれる同社独自の技術によって負荷分散とフェイルオーバーを実現している。DNSレコードを用いるため,BGPに関する設定を行う必要はない。

米ファットパイプの「FatPipe」シリーズ。一部は国内でも販売されているという

 同社はまた「FatPipe MPVPN」という,VPN接続の冗長性を確保するための製品も紹介している。VPNで接続するサイト間で対向に配置し,それぞれ3つのルータ,3つのISPにつないで利用する。

 MPVPNは「Multi-Path VPN」の略で,名前通りの機能を提供する。送信側のFatPipe MPVPNは,1つのVPNセッションで流れるデータを,利用可能なルータ,回線,ISPに振り分けて送り出す。受け手側のFatPipe MPVPNは,これらのデータを1つに集約し直し,本来の目的地に届けるという仕組みだ。これらは,同社が独自に開発した「MPsec」技術によって実現されているという。

 FatPipe MPVPNは,VPN接続の耐障害性を高めるだけでなく,安全性をさらに高める役割も果たす。データをばらばらのISPに送り出すため,万一盗聴され,データの復号化を試みたとしても,元には戻せないからだ。

 同社では,2Mbpsまでをサポートするエントリモデルのほか,50Mbsp,135Mbpsのモデルをそれぞれリリースしている。

関連リンク

▼米ルートサイエンス

▼米ファットパイプ

[高橋睦美 ,ITmedia]