収益重視型に転換するエクソダス,その強みは?

【国内記事】 2001.09.21

 独立系インターネットデータセンターの草分けとも言える米エクソダス・コミュニケーションズは,IT業界の不況の波を受け,経営基盤の強化を図っている最中だ。9月上旬には,それまで会長兼CEO(最高経営責任者)を務めてきたエレン・ハンコック氏が辞任し,後任にスリーコムの社長兼CEOも務めた経験を持つウィリアム・クラウス氏が就任している。

 日本法人でも同様に,経営基盤の強化が図られている。8月にエクソダス・コミュニケーションズの営業担当副社長に就任した中嶋安悟氏は,「会社の方針をこれまでの先行投資型からドラスティックに変え,収益性向上に向けた経営を行っていく。スリム化を行い,競争力の強化を図る」と語った。

 米国では一時,外部からの資金注入や買収の可能性について指摘されることもあった。しかし同社は6年前から連続してEBITDA(金利・税金・償却前利益)の黒字を計上しており,そうした不安はないという。また,先日の連続テロ事件の後,改めてデータセンター事業への注目が集まるようになったともいう。

 中嶋氏は今後,業務プロセスや営業力の強化を通じ,さらなる新規顧客の開拓を目指すとした。

強みは「マネージドサービス」と「プロフェッショナルサービス」

 同社はこれまで,基本的なインターネットホスティングサービスだけでなく,システムやネットワークの運用管理サービスを加えた複合型サービスを提供してきた。今後もその方向に変わりはない。これまでのサービスで蓄積してきたノウハウを活かすことで,他のデータセンター事業者との差別化を図る。

 その具体的な事業として中嶋氏は,マネージドサービスと,顧客ごとのコンサルテーションを組み合わせたプロフェッショナルサービスを挙げた。

 現在では,複数のデータセンター事業者,あるいはMSP(マネージドサービスプロバイダー)が,ハードウェアやネットワークの管理・監視などからなるマネージドサービスを展開している。だが中嶋氏は「こうしたメニューが増えるのはいいことだが,実体が伴っていない。ほとんどのデータセンターはまだコロケーションサービスにとどまっている」と,同社の優位性を強調した。

 同時に,顧客それぞれのニーズに応じたプロフェッショナルサービスを展開できることも,エクソダスの強みになると中嶋氏は言う。その例が,セキュリティポリシーの作成やシステムの弱点検査,さらにPKIやWeb認証サービスも含めたセキュリティサービスだ。

「顧客にインターネットデータセンターの良さを理解し,使ってもらうためにも,顧客のニーズ分析とそれに基づくソリューションの提供が重要だ。我々は単なるスペース売りではなく,コンサルティングを通じて個々の顧客に応じたサービスを提供していく」(中嶋氏)。伊藤忠テクノサイエンスやインターナショナル・ネットワーク・セキュリティ,野村総合研究所といったパートナーとの提携も,その強化につながるという。

 データセンタービジネスは,場所貸しともいえるコロケーションサービスから始まり,顧客ごとのカスタムサービス,マネージドサービスへと展開してきた。次の市場全般の動向として中嶋氏は,一連のサービスの上に乗るアプリケーションも含めた形のサービスが求められることになるだろうと述べた。

「システム運用をすべて自社内でまかなうことは,ますます困難になっている。企業にとってインターネットやWeb環境への移行は必須のものだが,セキュリティやスペース,バックアップといった問題がある。何より,メンテナンスする人間が技術や機器の進化に追いつけず,人材育成ができない。COBOLプログラマにWebアプリケーションのメンテナンスを求めても無理がある」(中嶋氏)

 インターネットを通じたコラボレーションからは多くのメリットが生まれるが,リスクもまた増える。そのリスクに対処し,企業にとって生命線とも言えるインターネットやサーバを100%サポートしていくのが,設立以来変わらぬエクソダスのミッションだと同氏は述べた。

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[高橋睦美 ,ITmedia]