e-Day:「ごっつぅえ〜やん」とATOKが大ウケ

【国内記事】2001.10.26

 あのATOKが関西弁もスラスラ入力できるように改良される。テレビや新聞でもいろいろと取り上げられ,ちょっとした話題になっている。でも,イチバン喜んでいるのは,こてこて関西人のI記者かもしれない。「ごっつぅえ〜やん。こういうのが欲しかってん」と,編集部で大騒ぎだ。

 これまでテキストを入れると大阪弁に変換してくれるという半ばウケ狙いのツールなどはあったが,ジャストシステムの浮川和宣社長は,大真面目だ。九州,中部,東北などの方言にも対応を拡大し,「いずれ全国をカバーしたい」と話す。

 同社では,これまでのバージョンでも「話し言葉優先モード」を組み込み,「書き言葉」だけでなく,「話し言葉」の入力を手間なく行えるよう取り組んできた。

 こうした話し言葉の技術は,既に三菱電機や日立製作所の携帯電話に生かされている。Pocket ATOKの搭載を売り物にした2社の端末では,他社製とは比較にならないほど快適に話し言葉を入力できる。三菱電機がコミカルなTVコマーシャルを流し,御存じの読者も多いだろう。

 もはや「イタ飯」は死語でシャレにならないが,IMEでは誤変換するところ,日立の携帯電話ではちゃんと一発で出してくれる。

 普段,私は日立の端末を使っているが,この端末には「あいうえお」の50音表からカーソルとボタンを押しながら読みを入力していくモードもある「オヤジ仕様」だ。それもあって,もはや乗り換えは難しい。

 話し言葉を意識していない辞書を積んでいる他社の携帯電話では,いきおい誤変換が多く,結局はひらがなばかりメールが飛び交うことになる。

 実は,同じことはパソコンでも起こっている。チャットがいい例だろう。チャットを書き言葉でやる人はいない。普段と同じ話し言葉をタイプするのだが,これがなかなか思ったように変換してくれない。若者特有の言葉だったり,特定のコミュニティーで通用する隠語に近いようなものだったり,あるいは方言丸出しだったりするからだ。

 マイクロソフトでは,Windows XPをブロードバンド時代の新しいプラットフォームと位置付ける。パソコンが単なる「読み書きソロバン」的な道具から,インターネットを介したコミュニケーションツールへと進化するのは間違いない。書き言葉ではない,さまざまな言葉にもきちんと対応しなければ,さらに大きな市場を失いかねない。携帯電話はもちろんだが,PDAやカーナビ,デジタルコンシューマー家電の市場だ。

 こうした「PC以外」の市場では,書き言葉はむしろ役に立たない。音声を認識するにも,メールを読み上げるのにも,話し言葉や方言への対応は避けられないだろう。

 いまジャストシステムでは,携帯電話市場に続いて,カーナビ市場に食指を伸ばそうとしているらしい。方言への対応とは少し違うが,Palm OS版ATOKで開発している技術がうまく転用できそうだ。

 来春発売の新しいATOK for Palm OSでは,「日本語グラフィティ対応」をうたい,「ひらがな」の認識が可能になる。「インクリメンタルサーチ」と呼ばれ,読みがなを1文字ずつ入力していくと,該当するアドレス帳のデータを引っ張り出せる機能があるが,これにひらがな認識の機能を組み合わせると操作性が格段に良くなる。

 こうしたマンマシンインタフェースをカーナビに応用すると,例えば,行きたい場所を液晶パネル上に1文字ずつ手書きしていくと該当する候補が現れ,あとは選択するだけになる。ジャストの関係者によれば,PDAとカーナビをガチャンコした複合製品の提案も行っているらしい。

[浅井英二 ,ITmedia]