デルCOO来日,エンタープライズへのシフトを鮮明に
| 【国内記事】 | 2001.10.29 |
デルコンピュータは10月29日,同社COO(最高執行責任者)のケビン・ロリンズ氏の来日記者会見を都内のホテルで開催した。同氏は,PC市場が来年の春から夏にかけて回復するとの見込みを明らかにする一方,サーバやストレージ,ワークステーションなどの企業向けの製品およびサービスでの最近の同社のプレゼンスの拡大をアピールしている。また,25日に米国で発売されたWindows XPについて,市場に爆発的な好影響を与えるほどまでには至らないのではないかとした。
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| 来日したケビン・ロビンズ氏 |
冒頭の挨拶でロリンズ氏は,IT市場について,IT投資の支出が減少傾向にあることや,米国テロおよびその後の戦争状態など,業界全体に不透明感が広がっているとした。一方で,今後の企業の成功要件として,パートナーやカスタマー,従業員などあらゆる関係者とのリレーションシップを構築することを挙げ,市場への楽観的な見方も持っていることを明らかにしている。
「デルの成功要因と同じように,よりよいリレーションを構築するための手段として,ITとりわけインターネットがけん引力となる」(同氏)
XPの効果は爆発的ではない
同氏は,先日25日に米国で発売されたWindows XPへの同社の見方について「Windows 95のリリースに匹敵する」とし,Windows XPにへの期待度の大きさを明らかにした。しかし一方で,「通常ならPCの売り上げがぐっと伸びるのだが,(景気の落ち込みやテロの影響を受けるため)「市場を爆発的に押し上げるとは考えていない」と話している。
Windows XPの機能面としては,ワイヤレスLANサポートなどを評価しているという。同氏は,企業向けのPC市場について,2000年問題への対応で前回PC購入の波が1999年の第2四半期に来たことから数え,3年の買い替え需要が来年の春夏にやってくるとし,「このときユーザーが選択するOSとして,Windows XPが当てはまるのではないか」と話している。
企業向け市場とサービスにシフトするデル
この日のロリンズ氏は,パソコンというよりは,サーバやストレージ,サービスなどエンタープライズ市場にフォーカスしていく同社の考えを強調した。
米ガートナーのデータクエストによると,2001年第1四半期の世界のサーバ市場で,デルは台数ベースのシェアを16.9%とし,25%のコンパックに次いで2位につけている。成長率は対前年比39.1%と大幅な上昇率を記録している。
また,先日の10月23日に,エンタープライズストレージ分野でEMCと包括的な提携(関連記事参照)を結ぶと発表したことについて,「(ストレージ分野での)EMCの製品開発力と,デルのロジスティクスおよびサプライチェーンマネジメントの強みを融合させたい」と話した。
同氏は,「日本でも提携の準備が出来次第共同での販売活動をしたい」とし,EMCの「CLARiiON」(日本名:Clarix )シリーズを共同ブランドとし,デルを通して12月から販売を開始したいという。デルは,同製品をSAN (Storage Area Network )の標準プラットフォームとして提供する考えだ。
さらに,事業領域のサービスへのシフトについて,「サービスビジネスは急成長しており,全体の10%を占めるようになった」と同氏は話す。サービスへのシフトはまだ米国ほどではないとしながらも,この10カ月間で170件の顧客を獲得したことを明らかにした。
米国テロへの対応
同社は9月11日に起こった米国同時多発テロで特別チームを立ち上げ,被害を受けた企業に対して最高レベルのプライオリティで製品を割り振ったという。そのシステム数は,ニューヨークやワシントン合計で3万5000システムに上る。
一方,同社はパソコン生産のための部品在庫を4日分しかもたないことで知られているが,「ヨーロッパの工場,マレーシア,中国の工場ではまったくテロの影響はなく,全体としても納品への影響は出なかった」とロリンズ氏は話す。
さらに,「(デルは)サプライヤーとの関係をしっかり構築しており,世界の複数の地域でテロなどが発生したとしても問題はないだろう」とした。
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[怒賀新也 ,ITmedia]

