e-Day:日本SGIからブロードバンドのプロ集団がスピンオフ

【国内記事】2001.11.27

 同じようなネタが続く。不思議なものだが,それだけブロードバンドやセットトップボックス(STB)が旬ということか。

 日本SGIは11月27日,ブロードバンド関連の精鋭たちをスピンオフさせ,システムインテグレーターの「メディア・クルーズ・ソリューション」(MCS)を設立したことを明らかにした。同社には,NEC,凸版印刷,NTTソフトウェア,ビーエスアイなども出資する。日本SGIは,この11月9日からNECおよびNECソフトが60%の株式を取得し,新体制がスタートしたばかり。

 日本SGIの和泉法夫社長は,「資本は変わったが,コアコンピタンスは不変」としながらも,日本全国をカバーするサービス体制や豊富な製品ラインなど,NECの資本参加による「心強い」バックアップについても触れた。

 また,システムインテグレーターのNECソフトとは,「もはや箱売りの時代ではなく,5000人に上るエンジニアと,ビジュアルコンピューティング,ハイパフォーマンスコンピューティング,そしてブロードバンドの各分野で連携していきたい」と話す。

 SGIはフロリダ州オーランドや国内の浦安市におけるビデオ・オン・デマンドの実験に早くから参画し,リッチコンテントの高速配信と管理システムにおいては世界をリードしてきた。また,最近では有線ブロードネットワークスや東京電力,東京通信ネットワーク(TTNet)のブロードバンド事業のパートナーとして実績を重ねているという。

 ただ,ここへきて,ADSLの加入者数が急激に伸び,また大手キャリアや電力会社が全国各所で光ファイバー網を利用したブロードバンドネットワークサービスの実験を開始している。

「特に新興の電力系を中心に一気に事業化したいと考えるところが増えてきた。そうなると,課金をはじめ,トータルソリューションを提供できないといけない」(和泉氏)

 ブロードバンドに特化したソリューション構築・運用のプロ集団をつくり,さらに傘下に入ったNECグループとのシナジーを狙うのが和泉氏の描いた戦略だ。新会社の社長には,日本タンデムコンピューターズからの部下で,コンパックでもテレコム営業を統括した五郎丸聡司氏を据えた。SIということで,自社ハードウェアにこだわることなく,また,NECのストリーミング配信プラットフォームである「StreamPro」もうまく生かしたいという。

 さらに新会社には,米オラクルと仏アルカテルの合弁企業である英サード・スペース・リビングや米On2テクノロジーという外資2社もパートナーとして資本参加している。

 サード・スペース・リビングは,新会社を通じ,彼らのビデオサーバである「OVS」やインタラクティブTV向けのビデオポータル製品「Vortel」を日本市場に紹介するのが狙い。また,ニューヨークに本社を置くOn2は,独自の映像圧縮技術を持ち,1.2Mbps程度のビットレートでDVD並みのクオリティを実現できるという。通常,DVDは6Mbpsなので約5倍も効率がいい。これならADSL加入者でもきれいなストリーミング映像が楽しめる。

 新会社のMCSでは,ビデオサーバのOVSに対応するSTBや,On2のソフトウェア技術を組み込んだ次世代のSTBを開発したいとしている。

 ただ,あくまでもSIにこだわるということで,エム・ピー・テクノロジーが国内で販売する比較的価格の安い英ペースのSTBも顧客のニーズに応じてインテグレーションするという。時代はソリューションなのだ。

[浅井英二 ,ITmedia]