モジュラー化されアプリに組み込まれていくLotus Discovery Server

【海外記事】2002.01.31

 昨年のLotusphereカンファレンスで派手なスポットライトを浴びたナレッジマネジメント(KM)が,今年は脇役に回ったようだ。しかし,IBM/ロータスにおけるKM戦略の重要性はむしろ高まっている。

 IBMソフトウェアグループのロータスソフトウェア部門でKM製品を担当するディレクター,スコット・エリオット氏は,「KMはこれまで単独の製品として市場を形成してきたが,しだいにCRMやSFAアプリケーションの一部としてその機能が組み込まれていくようになる」とし,その市場の変化を指摘する。これはIBMソフトウェアグループ全体が標準ベースのモジュラー化やビルディングブロック化を進めているのと同じ動きと考えていい。

 米国では,「Lotus Discovery Server 1.1」が昨年10月にリリースされている。その最大のポイントはDiscovery Serverがポータル製品のK-stationと切り離され,独立した製品になったこと。WebSphere Portal Serverを中心とする新しいIBM/ロータスのポータル戦略を受けたものだ。ちなみに昨年4月にリリースされた最初のDiscovery Server 1.0は,「Knowledge Discovery System」(KDS)の一部だった。

 Discovery Serverは,さまざまなドキュメントとそれを書いた専門家を探し出してくれる製品。K-stationと共に「Raven」というコードネームで開発され,前回のLotusphereでその全貌が姿を現した。

 構造化されていないさまざまなドキュメント(Notesや電子メール,ファイルシステム,あるいはWebドキュメント)を掻き集め,カテゴリーごとに自動的に分類してくれるほか,そのドキュメントを書いた専門家に関するパーソナルプロファイルも,DominoディレクトリやLDAPディレクトリをベースに,自動生成される。パーソナルプロファイルとリアルタイムコラボレーションのSametimeと組み合わせることで,素早く専門家にコンタクトできるシステムの構築も可能だ。

「フォワードされた」「リンクされた」といったように,そのドキュメントがどのように参照されたかをトラッキングすることで,その情報の重み付けをする機能もある。

 既に金融,政府,製造業で大規模導入が始まっており,最大のユーザーのJPモルガンチェースでは1万6000シートに達しているという。

 エリオット氏によれば,Discovery Serverの次期バージョンでは,最大で5000万ドキュメント,10万ユーザーまでサポートできるようスケーラビリティを強化するほか,XMLドキュメントやマイクロソフトのExchange Serverも検索対象として取り込めるよう改良されるという。

 昨年6月には,「Discovery Server API Toolkit」の提供も始まり,Javaによってカスタムアプリケーションを開発できるようになっている。ピープルソフトの「PeopleSoft ESA」(Enterprise Service Automation)では,Discovery Serverの機能を呼び出す形で緊密な連携が図られている。

 また,Lotusphere 2002のキーノートでは,アトミカの「Atomica For Lotus Discovery Server」もデモされた。

 アトミカの「Answer Delivery」と呼ばれるソリューションは,社内外の各種情報に対するシングルポイントのアクセスを提供するもの。これにDiscovery Serverを連携させることで,社内ドキュメントとアトミカが提供する外部情報などを1つのインタフェースから素早く参照できるようにしてくれるという。

 ロータス入社が1986年というベテランのエリオット氏は,「Discovery Serverでは,さらに小さなモジュール化が進められる。汎用性の高いNotes/Dominoとは違い,PeopleSoft ESAやIBM Life Scienceのような付加価値の高いソリューションの一部として提供されるようになるだろう」と話す。

[浅井英二 ,ITmedia]